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第27話

 まるで神々の婚姻のようだと大歓声を浴びた結婚式は、夜まで盛大に行われた。祝いの舞踏会に頑張って笑みを浮かべていたゼノンは侍女たちに促されて一足早く城に用意された自室に戻ると、念入りに湯あみをさせられて夜着に着替える。 〝姉さまからのプレゼントよ! ぜっっっっったいに初夜はこれを着てね!〟  ゼノンより少し早く嫁いだ姉がわざわざ馬車を飛ばしてまでやってきて、初夜という言葉に顔を真っ赤にして固まっているゼノンに押し付けてきた布の塊を、やはり姉に逆らうことのできない彼は律儀に持ってきて身にまとったのだが、その姿をみて思わず顔を隠ししゃがみ込んでしまう。 「まぁ! なんて可愛らしい夜着なんでしょう!」  侍女のはしゃぐ声がさらにゼノンの羞恥心を煽る。確かに、確かに姉が用意した夜着は可愛らしいものだ。それこそ、ゼノンの好みにピッタリと言えるだろう。だがしかし、それとこれとは別だ。  新婚初夜にふさわしく真っ白な夜着は上半身こそ少し胸元が見えすぎでは? と思う程度である意味普通であるが、下半身が問題だった。コルセットも鳥かごのようなパニエも無いが、幾重にも柔らかで美しい布が重なりふわりと広がっている。そう、まるでドレスのようだ。  女性の衣装は可愛い。ドレスは芸術作品だ。もう一度着たいと思うほどには抵抗感も無い。だが、自分の女装姿を知っている王子の目の前でこの姿をするのは正直とても恥ずかしい。恥ずかしくて恥ずかしくて、もう消えてしまいそうだ。しかし侍女たちはこの夜着に大賛成のようなので、別のものを用意してくれとは言えない。それに着なかったと知られた時の姉の反応が恐ろしすぎて脱ぐこともできなかった。 「さぁ、こちらでございます」  侍女たちに促されて渋々立ち上がり、寝室へ先導される。寝室に到着すると侍女たちはお休みなさいませと言って早々に出て行った。広い部屋に一人、ポツンと立ち尽くす。目の前には大きすぎる天蓋付きのベッドがあり、それが何を意図してのものかうっかり考えてしまったゼノンは顔を真っ赤にして再びしゃがみ込んでしまった。ベッドを見るから変なことを考えてしまうのだと膝に顔を埋めるが、結局見なかったとしても同じようなことをグルグル考えてしまう。そんな羞恥との闘いをどれほどしていただろう。突然そっと肩に触れられたゼノンはビクンと大げさなほどに肩を震わせて勢いよく顔を上げた。そこには薄暗い室内でもよく見える、美しい金髪がある。

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