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もっと捕らえて.裏 2
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オレは緋音さんが連絡してくれたお店に来ていた。
今朝、急に夕飯は外で食べようって言ってきて、あまりに急だったからびっくりしたけど、もしかしたら。
明日はオレの誕生日だから、かもしれない。
本当は明日がよかったんだろうけど、緋音さん、明日は一日撮影が入ってて、夜遅くなることはわかってるから。
だから今日にしてくれたのかも。
オレの誕生日なんか全然覚えていないフリをしながら、いつも毎年ご飯食べに行ったり、プレゼントくれたりする。
ツンデレというか・・・デレツンというか・・・オレのことなんか興味ないですよって顔して、ものすんごく気にしてくれている所とか。
嫌がりながらも何だかんだでオレの希望を叶えてくれたり、オレのこと色々気にかけてくれるし、オレを拒絶しないで優しく受け入れてくれる。
でも素直にそれを表現できなくて、たまに突拍子(とっぴょうし)もないことしでかしたり、いきなり可愛いこと言ってきたりするから、それを見てるのが楽しいし、嬉しい。
今夜のデートもそう。
こんな風に誘ってくれることもあまりない・・・思い返せば毎年オレの誕生日の時に誘ってくれている。
嬉しい。本当に嬉しい。
年に一回だけ、いつものクールな態度の緋音さんとは真逆の、素でデレてくれるのが、そのギャップに可愛さに堪(たま)らなく愛おしさを感じた。
最高のご主人様。
ほんと好き。
オレは緋音さんが予約してくれたお店のある銀座に、一人で来ていた。
緋音さんは今日は事務所で打ち合わせがあるから、直接お店に来ると言うので、オレは約束の時間の少し前に到着するように家を出た。
緋音さんが予約してくれてお店はスペイン料理のお店だった。
ワインが好きな緋音さんらしい。
スペインならそんなに畏(かしこ)まらなくて良いし、ワインも美味しいから、きっと楽しく食事ができるだろう。
木製のぶ厚い扉を開けてると、店員の若い女性がすぐに近寄ってくる。オレは店員の女性に、予約していることを告げると席に案内された。
予約の時間までまだ10分くらいあったが、席に通してもらえてよかった。
店内はそこまで広くなく、テーブル席とカウンター席があり、白い壁と木の柱、テーブルも椅子も木製で統一されて、料理が誰かのイラストで書かれた紙が壁に一杯貼られていて、どれも美味しそうにみえてくる。
とりあえずワインは頼んだほうがいいかな・・・。
そんなことを考えていたら、スマホが小さく震えた。
開くと緋音さんから『少し遅れる』と連絡が入っていた。
オレは『わかりました』と返事をすると、画面を落として、店員さんを呼んで白のグラスワインを頼んだ。
緋音さんが来るまでは、食べないで待とうと思う。
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