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目醒めの夏 第7話
「もうちょっと話してくか? 朝ご飯は食べたん?」
「食べたよ」
でも、宿題は終わってない。
気まずくて思わず視線を逸らすと、優一郎は困ったように笑って肩をすくめた。
「指輪ありがとぉな」
「や、別に。おまけについてただけやし」
もうちょっとここで話していたかったけど、宿題もせずに抜け出したことがばれたら母ちゃんにゲンコツを食らってしまう。
今ならうんこ行ってたっていったら誤魔化せるかもしれないし……
だから、お昼からまた来るって言って家の方へと歩き出す。
「そうや、宿題持ってきて手伝って貰えばええやん」
名案とばかりに優一郎の方へ振り返ろうとした瞬間、パシャンって水音がした。
この湖は魚もいて、時々それが音を立てることもあったけどこれはそんな音じゃない。
「なに 」
嫌な予感がして湖の方へ走り出す。
「 あ、にーちゃ みーっけ!」
いつもレジャーシートを広げる、湖前の開けた場所から妹が見えた。
湖の中で、
手を振って……
「動いたあかんっ!」
ブイを掴もうとした手が俺の言葉に驚いたのか滑って……
どぷんって妙に柔らかい音がした。
「 ──── あ」
間抜けな自分の声がその後を追って響いて、それだけだった。
派手な水しぶきもなく、悲鳴もなく……ただブイだけが揺れる。
何が起こったのか理解して、ぞわりと背中に震えが走った時には波紋が消えそうになっていた。
「 っ! な、なんでっ」
服を脱がなきゃだとかそんなこと考えることもできないまま、浅瀬を駆け出す。
「なんで! なんでこんなとこ! なんでっ」
駆け寄りながら、家を出る時に妹と目が合ったことを思い出した。
「俺、を……追ってきた?」
おじいちゃんの家から湖は、小学生になった妹には簡単だ。
こっそり抜け出した俺に興味を持って追いかけてきたんだろうけど……
「っ、なんで 」
真夏の昼間でも冷たい水は、朝と言うこともあって怯みたくなるくらい冷たい。
駆け寄る足が水に邪魔されて重たくて、でも妹のところに駆け寄らなくちゃって気ばかり焦って……
ブイのところまで駆け寄ったけれど、妹の姿は見えない。
黄色いワンピースは水中だと目立つはずなのにそれがどこにも見当たらなかった。
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