14 / 16

午睡の蹲 第5話

「ぁ、ん……」  幾度も思い描いた優一郎の胸に手を置き、そろそろと薄い桜色の尖りに触れる。  硬く健気に主張するそこを丹念に苛めると、恥ずかしがる優一郎の肌がますます赤くなって、それが胸を締め付けた。  硬い岩の上に服を敷いて、できる限りそっと寝かせるとお互いがお互いの姿に小さく照れた。  明るい日差しは湖面に反射していることもあり、影を許さないほどの明るさで互いの裸体を曝け出す。 「や、やっぱり……慣れんね」  恥ずかしそうに両手で体を隠そうと奮闘する姿に、俺自身も恥ずかしいのだと伝えられないまま覆い被さる。 「こうしたら見えんやろ?」  馴染むようで異質な他人の肌の感触を確かめるように、熱い掌でゆっくりと辿って行く。  わずかに開いた唇から漏れる吐息と、甘い上ずった声。  それは、繰り返し思い描いてきた想像の中の優一郎よりももっと艶めかしかった。     奥深くを穿ち過ぎたのか、優一郎の堪えようとした甲高い声が零れて、苛めていた手の中に吐き出した感触がした。  荒く上下する肩を抱き締めながら最奥に吐き出すと、声の途切れた唇から深い深い吐息が漏れる。 「……っ」  華奢な体。  俺が力いっぱい抱き締めたら折れてしまうんじゃないかってくらい、不安になるほどの…… 「靖治」  問いかけられて、返事ができないまま腕の中へと視線を落とす。 「ありがとぉな」 「何がや?」 「無理してきてくれたん、わかっとるよ。きよちゃんがずいぶん怒ってたん……知ってん」  腕の中で小さく身を竦めると、優一郎は膝を抱え込んだ。   「俺は、靖治に幸せになってもらいたいん。やから、俺、きよちゃんに追い出される前にここを出よう思うんよ。やから、ありがとぉや」  くしゃくしゃと笑う優一郎にむっと顔をしかめてみせる。 「ここおったらええ」  売るのを中止して、俺があの家に越して……  大学は辞めてしまえばいい。  そうすれば毎日ここに来ることができる。 「俺、毎日来るし」 「……」 「優一郎の傍おるよ、やって、俺、お前のこと大事やし」  そう告げると、腕の中の体にぎゅっと力が籠る。  膝を抱えた手に鈍く光る玩具の指輪にそっと触れて、万感の思いを込めて言葉を口にした。     「  ────優一郎のこと、好きやから」  正面切って言うなんて気恥ずかしいことを自分がするなんて思ってなかった俺は、ぽかんとこちらを見ている優一郎に見つめられる居心地の悪さに背を向けるしかできない。

ともだちにシェアしよう!