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第7話
このまま隠れて朝までやり過ごせるだろうか。
普通はああいう化け物の類いは朝になれば消えるか活動を止めたりしないか。
安全になったら外に出よう。それが一番だ。
幸い、帰るのが朝になっても家族は心配しない。
実は現在、秀一は家に独りなのである。学者である両親は海外での発表会の予定が入り家を空けている。
秀一自身は夏休み中で、独り家に留守番をしていた。
自由気ままな独り暮らしを満喫中というわけ。そうでなければ高校生がこんな真夜中に出歩き生配信活動など出来やしない。
あの化け物が学校に憑いていると考えるなら、学校からは出てこないと仮定するなら、秀一自身だけなら逃げてしまえば助かるかもしれない。
しかし、学校外まで。それこそ何処までも秀一を追い掛けてくる可能性だってあるだろう。
「どうしよう、どうしたら」
仮に学校から出てこないとし、あれをそのまま放っておくとどうなるか。
この廃校舎は現在オカルト界隈では話題のスポットだ。
今後も訪れる人がいるに違いない。そして、秀一のように襲われるのではーー
秀一は人間が好きではない。
酷いことばかりされてきたからだ。
だったら、誰が来てどうなろうと知ったことではない……
「畜生ーー」
無責任ではないはずだ、逃げても。きっとネットに写真をアップし警告をした人物もそうだったに違いないから。
秀一はただの高校生だ。
立ち向かう必要などあるか。
だが。
YouTuberシュウならどうしただろう。
逃げるだろうか。
ピアノの下から這い出すと、身を屈めながら移動し扉の隙間から廊下を窺う。
何もいない。誰もいない。先程までの恐ろしい体験が嘘のようだ。
まだトイレにいるのか、あれは。
秀一は更に考える。
あの化け物の髪の毛は、ナイフで切ることが出来た。
また、その髪の毛は秀一の脚に絡み付いた。
幽霊は生者に触れられない、通り抜けてしまうなんてのをお話ではよく聞くがそうではなかった。
髪を切ることが出来たんだから、此方から触れるのも可能と考えていい。
つまり、物理的な手段が通じる。
ならば、もしも。
「あのナイフを幽霊に刺せればーー」
呟いてから失笑する。
馬鹿馬鹿しい発想だ。漫画やアニメに感化され過ぎだ。
ナイフで幽霊をどうにか出来る?倒せる?死ぬ?
幽霊ならばとっくに死んでいるのだろうし。
でも、幽霊かだってわからないじゃないか。
効かないとも限らないじゃないか。
「そうだ。物事は、やってみなくちゃわからない」
その顔つきは臆病な高校生ではない。YouTuberシュウのキリリとした表情だった。
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