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第13話★
右手をひたり、鏡に添える。左手には懐中電灯がある。
男の方が背が高いので秀一の顔の位置は随分下だ。
鏡越しに、秀一は男を見上げた。やはり、目が覚めるようなイケメンだ。胸がとくん、と鳴ったような気がする。
『いいんだな』
「うん……」
『じゃあごめんください、お邪魔します』
「なにその挨拶、玄関先かよ!…ーーふぁッ」
男につっこもうとした矢先、鏡の中からじわじわと黒い霧が泉のように湧き出でて。
染み出る、と表現した方が正しいだろうか。
驚いて間抜けな声を上げてしまう秀一。
靄のような霧は秀一の周囲に広がり、あっという間に身体をすっぽりと包んだ。
「なッ……!」
霧は生暖かく、まるで全身に息を吹き掛けられているようだ。
こんな感覚今まで味わったことがない。
『俺の分身だ。案ずるな』
そうだ、これはさっき秀一の首を絞めあげたのと同じものだ。
言われて気付く。
ではやっぱり殺されるのか?
騙されたのか?
恐怖が再び襲ってきた。
霧が集まり実体を象る。それはタコの手足ーーつまり触手のような形に。
うねうねと蠢く何本もの塊が秀一の腕、脚の上を蛇のように這い回る。そして幾重にも絡み付いて、拘束する。
「何をすーー」
『大丈夫、痛くはしない』
痛くなく、苦しませず殺す?
『気持ちよくしてやるーーお前の全身を』
「はぁ?!」
思わずひっくり返る声。
「気持ちよくって、一体僕に何を…!!ひぁッ」
二本の触手が秀一の腹を一周して臍下辺りに回り込み、ベルトに触れる。そして器用にベルトを外し始めた。
カチャカチャ。
「なッ、なッ」
するり、とズボンから抜かれたベルトが床に落ちる。
続いて、ズボンが下着ごと一気に引き摺り下ろされた。
立ったまま鏡の前で、身動き出来ないまま下半身を露にされる秀一。
上半身に着ているパーカーはそのままだし、ズボンも膝下あたりにまだあるが、一番恥ずかしい部分を曝されている。
羞恥に秀一の顔は真っ赤になる。
「や…なッ、何を、何をするんだ!」
訳がわからずに混乱した秀一が叫ぶ。霊との合体とはこんなことなのか?!どうして服を脱がされた?!
これじゃ、まるで今からーー
犯されるみたいじゃないか。
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