13 / 117

第13話★

右手をひたり、鏡に添える。左手には懐中電灯がある。 男の方が背が高いので秀一の顔の位置は随分下だ。 鏡越しに、秀一は男を見上げた。やはり、目が覚めるようなイケメンだ。胸がとくん、と鳴ったような気がする。 『いいんだな』 「うん……」 『じゃあごめんください、お邪魔します』 「なにその挨拶、玄関先かよ!…ーーふぁッ」 男につっこもうとした矢先、鏡の中からじわじわと黒い霧が泉のように湧き出でて。 染み出る、と表現した方が正しいだろうか。 驚いて間抜けな声を上げてしまう秀一。 靄のような霧は秀一の周囲に広がり、あっという間に身体をすっぽりと包んだ。 「なッ……!」 霧は生暖かく、まるで全身に息を吹き掛けられているようだ。 こんな感覚今まで味わったことがない。 『俺の分身だ。案ずるな』 そうだ、これはさっき秀一の首を絞めあげたのと同じものだ。 言われて気付く。 ではやっぱり殺されるのか? 騙されたのか? 恐怖が再び襲ってきた。 霧が集まり実体を象る。それはタコの手足ーーつまり触手のような形に。 うねうねと蠢く何本もの塊が秀一の腕、脚の上を蛇のように這い回る。そして幾重にも絡み付いて、拘束する。 「何をすーー」 『大丈夫、痛くはしない』 痛くなく、苦しませず殺す? 『気持ちよくしてやるーーお前の全身を』 「はぁ?!」 思わずひっくり返る声。 「気持ちよくって、一体僕に何を…!!ひぁッ」 二本の触手が秀一の腹を一周して臍下辺りに回り込み、ベルトに触れる。そして器用にベルトを外し始めた。 カチャカチャ。 「なッ、なッ」 するり、とズボンから抜かれたベルトが床に落ちる。 続いて、ズボンが下着ごと一気に引き摺り下ろされた。 立ったまま鏡の前で、身動き出来ないまま下半身を露にされる秀一。 上半身に着ているパーカーはそのままだし、ズボンも膝下あたりにまだあるが、一番恥ずかしい部分を曝されている。 羞恥に秀一の顔は真っ赤になる。 「や…なッ、何を、何をするんだ!」 訳がわからずに混乱した秀一が叫ぶ。霊との合体とはこんなことなのか?!どうして服を脱がされた?! これじゃ、まるで今からーー 犯されるみたいじゃないか。

ともだちにシェアしよう!