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第19話

無事に保護された秀一ではあったが、高校生が夜中に危険な場所に独りで出歩いていた、という事で警察の人からお説教を食らった。 海外にいる両親や秀一が通う学校にも連絡が行ってしまい散々である。 折角の夏休み中であるのに、不要な外出禁止。つまり謹慎だ。担任からそう言い渡されて絶望的な気分になった。 食糧などの買い出しは許されるが、配信の為に遠くに撮影にいくのは許されない。 当然、あの廃校舎に行くことも。 だが、ここまでの問題などは些細なうちである。 一番困っているのはーー 『嗚呼、退屈だな。鏡から出たらあちこちに行きまくろうと考えていたのに』 「そこ、僕のベッドなんですけど」 『秀一、テレビをつけてくれよ。お笑い番組が見たい』 「幽霊がお笑い好きなのかよ」 『幽霊がお笑い好きで何が悪いんだ』 秀一の部屋である。廃校舎で秀一の体内に入った霊、つまり男は、そのまま一緒についてきた。 体内にずっと居るものかと思ったら、今現在ベッドの上で大の字になり寝ているように、実体化も可能らしい。 実体化した奨は人間と変わらず、物に触れることが可能だ。 「邪魔だから僕の中に引っ込むか、床で寝てくれませんか、奨さん」 『床で寝ろとか鬼か。鏡の中はずっと暗くて冷たかったんだ。ふかふか布団を満喫させろ』 「だから僕の布団ーー!」 奨、というのは霊である男の名前だ。あの後、彼が名乗ったのである。自分はかつてあの学校に勤めていた教師であり、名前はーー 神代奨(かみしろ しょう)であると。 彼は、なんらかの理由で亡くなって霊体になり、なんらかの理由であの鏡の中にいた。 なんらかばかりなのは、説明すると言ったのに奨が自身に纏わる個人的な事は中々話さないからである。 『いずれ話す。もう一度あの廃校舎に行く時が来たらな』 それは例の女の幽霊を天国に送る手伝いをする、という意味であろう。 彼女の事を将は生前の知り合いと話していた。どういう関係だったのだろう、そして二人は何故死んだのだろうか。 話してくれたらいいのに。 こうなったら霊媒師とかプロにお金を払って頼むしかないのだろうか、彼を追い出すには。 『シュウ、君は俺を追い出したいのか。望んで俺を取り入れたんじゃないのか』 「あの時は、化け物を倒すのに必要だと思ったから無我夢中でーーそ、それに、入る時にあんなエッチな事されたし! 出ていけよいい加減!」 『だから離れられないんだって』 「嘘だ!じゃあ僕は死ぬまでお前と一緒なのかよ」 『お前じゃなくて奨さん。一応歳上だし、俺は先生だぞ?そうだ、勉強わからないところがあれば教えようか?夏休みの宿題』 「黙れ!」 秀一はクッションをベッドにいる奨に向かって投げた。 奨は身軽にひょいと避ける。 『なんでそんな悲観的なんだ。俺が同化したことでプラスもいくつかあるんだから、そっちを喜べばいいじゃないか』 「何が良いことなんだよ」 ベッドの上に胡座をかき、奨は語りだす。

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