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第25話
「何すんだよ、馬鹿、エッチ!」
『いや、感じてたしして欲しいとも言ったじゃないか』
「そういう問題じゃない!お腹がすいたって話じゃなかったのか?なんでいやらしい事をするんだ!」
恥ずかしさが極まり顔から火が出そうだ。秀一は奨の厚い胸板をぽかぽかと拳で叩く。
こほんと咳払いのふりをする奨。
『いいか。精液というのは子種を沢山含んでいる。つまり生の塊、エネルギーそのものなんだ。霊体である俺にとっては一番の御馳走なんだよ』
だから精液を飲んだ?秀一の混乱は極まる。
「だ、だからって!食事で必要だからと好きでもない相手にーー僕の身体にあんなそんなして。おかしい!お前はおかしい!」
わあわあ喚くのは、恥ずかしさを誤魔化したいから。
まさか精液が霊体の食事であるなんて夢にも思わなかった。
食事の度に毎回あんなことをされるのか?恥ずかしくて耐えられないと、秀一は涙を浮かべる。
一番耐えられないのは、好きでもない相手、人間ですらない相手に触られ感じまくってしまったことだ。
『……好きかどうかはまあ、君の言う通りだ。しかし』
秀一の背中に奨の腕が回される。きつく抱き締められて、瞬く。
『そういう君が可愛くてたまらないんだーーと言ったら、怒るか?』
「!!」
秀一はまともに恋愛をしたことがない。女子にモテなかったし、男子からはからかわれて悪戯されるし。
霊体とはいえ、こんなイケメンに真っ向から可愛いと言われてどうしたらいいかわからず、ただ目を白黒させる。
教師のくせにこいつ、なんでこんな口説き文句に長けてるんだ?
実はナンパ師かジゴロだったんじゃないか。
「可愛い?」
『可愛いよ』
「……」
秀一はいぶかしんだ。
しかし、その暖かい腕を振り払う事が出来ない。
「……お腹、すかせたら可哀想だから。たまに、なら」
『食べていいのか?』
「ご、ご飯をあげる。それだけだからな!」
ツンと頬を膨らませて不機嫌そうな声を出す秀一。
そんな姿に奨は眉尻を下げる。
『ふふ、ありがとう。二日にいっぺんでも構わない。だから濃いのをたっぷり頼む』
「う、うるさい!変な注文すな!」
濃いだのたっぷりだの!
秀一は恥ずかしさに消え入りたい。
「言っとくけど、……鏡の前でしたようなのはやだからな」
『ん?』
顔を隠して問う秀一。それはつまり挿入行為だ。あの時は、触手に犯されたわけだが、射精とは違う絶妙な快楽を感じた。
『好きな人に抱かれたいから?』
「……抱かれたいって。
僕はそもそも男だから。抱かれる、というのがおかしいんだけど……まあ、そうだよ。
奨さんはたまたま僕と相性がいいから取り憑いて、エネルギーが必要だから僕とシてるんでしょ?
そうじゃなくて……セックスは、好きな人同士するものだと、僕は思っていたから」
セックスなんて言葉にするだけで顔から火が出る。
考えているような沈黙。やがて奨が口を開く。
『君の言う通りだ。必要だから、している。俺は君をまだ知らないし、君もまだ俺を知らない。だから、好きという感情には至らないよ』
「……」
何故だろう。胸が抉られるような気持ちになる。
秀一は両手で顔を覆う。
『こうしよう、俺の気持ちがハッキリするまで、抱かないよーー君を』
奨はそう言った。
ハッキリするとはつまり、彼が秀一を好きになる、ということか。
そんな事があるのだろうか。
秀一は今まで誰からも好かれたことなんかない。
『だけど、エネルギーは必要だからミルクは飲ませてくれ。
腹が減っては戦は出来ん。
ーー君の精液は甘くて濃くて最高にうまいんだ』
「!!!……馬鹿ッ」
恥ずかしさと怒りに狂った秀一は、完膚なきまでに奨をぽかぽか殴りで痛め付けた。
こうして秀一はイケメン霊と毎日恥ずかしい行為に及び、彼に食事を与えるようになったわけである。
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