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第27話

謹慎中、秀一はYouTubeの配信を毎日続けた。 こういうものは定期的に配信しないと人気が落ちてしまう。 廃校舎での出来事は結局映像に何も残っていなかった。 警察や救急隊が来た事実も知れ渡ってはいない。 リスナーたちはガッカリした者も多く、死ななかったなら金返せなど酷いコメントまでついた。 だが、安堵する者、YouTuberシュウの無事を喜ぶリスナーだっていた。 あの時は香典を叫ぶ声に、マイナスオーラにやられてみんなから嫌われているように感じた。 人間は不思議なもので、何十人に好かれていても、たった一人嫌いだという人が現れると落ち込むものだ。それが全員の声のように感じてしまったりする。 秀一のような自己肯定感の低い人間は特に。 しかし、冷静になってみればそれは、自身の弱さが産み出す思い込みであったりするのだ。 秀一がやってきたことへの評価は存在する、ちゃんと。 『これがYouTube、というものか。君が撮った映像がテレビみたいに流れているんだな』 動画編集を眺めて奨はそんな風に呟いた。 『俺が生きてる時にはこんなものはなかったよ』 「奨さんが生きてたのは江戸時代?」 『それならチョンマゲ結ってるだろ、着物だろ、サムライだろ。教師だと言ったじゃないか』 「はいはい、エロ教師ね」 『食事だ食事』 秀一はオカルトの噂話を独自に研究した結果を配信する。 地味な内容だが、元々『真夜中パーティ』は秀一が引きこもりになった際に始めたチャンネルだ。 部屋でも出来る内容がメインである。生配信の方が稀なのだ。 あれから生配信は行っていない。 『それにしても、こんなことが出来るシュウは凄いな』 手放しに褒めてくる奨。秀一はふるふると首を振り赤くなる。 「詳しくない素人でも簡単に撮影編集が出来る機材があるからね。僕が凄い訳じゃないよ… 今なら小学生だって出来るんじゃないかな?」 『そんな時代が来るとはね』 「ところで、奨さんはなんで僕を秀一、じゃなくてシュウ……YouTuber名で呼ぶの?」 別にどう呼ばれても構わないが気になって。 『響きが可愛いから』 「聞くんじゃなかった」 『訂正しよう。可愛い秀一には可愛い名前が似合う』 「聞いてないよ?そこまで」 呆れた声を出すが、最近は可愛いと言われて悪い気はしなくなっていた。奨が褒めているのには変わりないのだから。 ただ恥ずかしいから、嬉しそうな様子は決して見せない秀一である。 「YouTubeそんなに面白い?」 『面白いな。テレビよりずっと細かいジャンルがあるし、好きなものが観れる。素人からプロまで色々な人間が配信をしているのも面白い』 実体化した奨は、椅子に座りディスプレイを眺めている秀一の後ろにいるのだが、秀一の首に腕を回してくっついている。 「なんでそんなにくっつくの?」 『駄目か』 「駄目ではないけど」 『じゃあいいだろう。中にいるよりこの方が心地好いんだ』 べたべた大の男が纏わりつくのはいかがなものか。 正直重たいし邪魔だ。 体内で大人しくしていたら良いのに。

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