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第33話
『バトルを試す絶好のチャンスだ』
奨が煽るような口調だったのはそのため?
秀一と奨は色々な研究と実験をしていた。
二人がどの程度の距離を離れられるか、奨の声は思念なのか、距離は関係あるか。
霊体である奨は人間だけでなくすべての物に触れるのか、また、壊したり出来るのか。
その力はどれぐらいあるのか。
死狂とバトルになることも想定し、奨は黒霧を触手だけでなく様々な形に変える研究もしていた。武器として使うために。
そんな成果を今試そうと言うのである。
確かにそれは意味のあることだ。
いずれもっと危険な死狂に遭遇するかもしれない。
もしピンチになったら秀一が逃げてコンビニ青年との距離を開けばいい。Amyはコンビニ青年に取り憑いているのだから、彼が動かない限りは追い掛けて来られない。
大丈夫だ。秀一はこくりと頷く。
ざわざわと奨の背後で蠢く触手たちは、まるで漆黒の翼のようだ。
一触即発状態。
『はん、何をしようっての?まさかあたしの友基を傷つけようってんじゃないわよね』
「そんなつもりはないが」
ギリリと唇を噛んで戦闘体勢に入るAmyに、奨が凄まじい殺気のオーラを返す。
『それはこっちの台詞でもある。お前のその長い爪がほんの少しでもシュウを傷つけたらーー』
『存在ごと、消し去ってやる』
シャッとAmyの赤い爪が伸びた。鋭い切っ先が奨の心臓を狙う。
『甘い』
奨は華麗なサイドステップにてAmyの攻撃をかわす。余裕綽々に。
奨の軽いウェーブの髪が風に揺れる。
挑発するように人差し指を立てくいっと曲げる奨。
気障なポーズだがイケメンがするとこうも様になるのか。
秀一は自分の生まれを呪う。
『ばっかにして!』
Amyが地団駄を踏む。爪のニ撃目が今度は喉笛あたりに向けて飛んできた。さっきより速い。
もしあの爪が刺さっていたらどうなった?
霊体が傷付いたらどうなるのか。
軽い傷に関しては、生命エネルギーを得て時間をかければ回復することは判明している。だが、人間と同じように傷には痛みが伴う。
奨は大丈夫と言ったが、秀一は心配で仕方ない。
彼に傷ついたり、痛い思いをしてほしくない。
祈るように目を閉じる。
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