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第37話
友基のバイトが終わるまで時間がある。秀一たちは家に帰り、夕方に彼が来るのを待つことにした。
秀一の家は木造二階建ての一軒家である。三人家族には広すぎる家だが、建て売りだから仕方ない。
両親は学者という職業柄家を空ける事が多い。小さな頃はお手伝いさんに来て貰い食事や掃除を補助して貰っていたが、今は秀一が独りでやっている。
半年間の引きこもり時期に大体の家事は出来るようになったから。
帰宅すると秀一はのびをする。
公園では緊張の連続だったから疲れたのだ。
「お腹すいた……何か作って食べようかな」
『奇遇だな。俺も腹が減った』
「えっ」
秀一の体内にいた奨が実体化する。
『倒れそうだ、シュウ。食事をくれ』
彼が言う食事とは、秀一との性的行為である。
「ま、待ってよ。今すぐ?!」
『問題あるのか。友基が来るまでは時間があるだろう?』
秀一の細い腰に奨の腕が回される。強引に引き寄せられて身体が密着した。
「ひゃ」
耳朶を食んでくる奨。彼にとっての食事とは生命エネルギーの塊である精液だ。
本来ならキスしたり、秀一を必要以上に感じさせる必要はない。
が、奨はいつも性行為を丁寧な前戯から開始する。
理由を聞くと、何をわかりきった事を、という顔をされた。
『感じまくるお前が可愛いからに決まってるだろう?』
それを見るのが楽しみである、とでもいうように。
そんなだから、食事を求められると秀一はとても恥ずかしい。
食事を求めているのか、秀一を求めているのか…。
どっちもか?!
「い、今すぐは駄目。外に居たから汗をかいたし」
きっと奨はギラギラした獣のような瞳で見つめているはずだ。秀一は唸る。
耳を甘く噛まれ、びく、と肩を震わせる。
「やっ…」
熱い息を吹き掛けられた。
彼を間近に感じ、ドキドキが高まったその時。
『汗の匂いは興奮する。そのままがいい』
「?!」
奨の恥ずかしい煽り言葉が降り注ぐ。
『君の汗を嗅ぎながら、シたい』
「ちょッ」
またそんないやらしい言い方…
カアアと赤面がみるみるうちに広がり、秀一は奨を振りほどいた。。
「だッ…だからそういう言い方はやめろって言っただろ!馬鹿!変態!エロ虫!」
『エロ虫はどんな虫だ』
「知らないよ!汗を嗅ぎたいなんて言うな!もう!」
怒った秀一は無言でバスルームへと向かう。が、奨はついてきた。
「ついてこないで」
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