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第43話
ビックリして、スプーンを手から落とす。椅子から立ち上がり、秀一はすぐ奨の元へ駆け寄る。
青ざめた唇、白みがかった肌、ぐったりとした身体ーー霊体だなんて微塵も思えない様子の奨は床に伏して身動きをしない。
「どうしたの?!しっかりして!」
具合が悪いのか?!救急車ーー
いや、彼は霊だ。ならば?
「今呼ぶから!霊柩車だよね?!」
違うそうじゃない。
混乱した秀一の腕を、起き上がれぬままの奨が掴む。
『……落ち着け、シュウ』
奨の意識はあった。息も絶え絶えといった様子だが、パニック状態でわたわたする秀一を放っておけず、気力を振り絞ったのだ。
『腹が減ったんだよ……霊柩車は呼ぶな、もう葬式は多分とっくに済んでる』
そもそも霊が霊柩車に乗ってどうする。
彼がお腹がすいたと言っていたのを、秀一は漸く思い出した。
「ご、ごめんなさい、僕だけ用意して貰ったご飯を食べて」
そうだ。秀一は奨にご飯抜きを宣言した。しかしそんな秀一に対して奨は、お腹をすかせながらオムライスを用意してくれたのだ…。
『いいんだ、あれは俺が悪かったんだから』
弱々しい声だ。生命エネルギーが足りないと霊はこんなに弱るのか。
「すぐご飯をあげる!」
さっきはお預けを言い渡したが、こんなになってしまった奨を放ってはおけない。
ご飯はつまり、精液である。
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