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第50話
『解決出来て、本当に良かった』
「良かったのかな?」
確かに二人の誤解は解けた。しかし結局、Amyは天国へ行ってしまった訳で、二人は離れ離れになったのではないか?
『霊は地上に残るべき存在じゃない。悔いを晴らして天国へ行くのが正しい形だよ』
確かに去り際のAmyは晴れ晴れとした顔をしていた。
運命を受け入れて、あるがままを受け入れて。
奨の言葉を聞いて、秀一に不安が過る。
「それはーー奨さんも?悔いを晴らしたら、僕から離れて天国へ行っちゃうの?」
取り憑かれた時は出ていって欲しかった。疎ましく感じた。
しかし、彼と性的な交わりをし、好きだと言われて秀一の気持ちは変わっていた。
「……奨さんの悔いってなんなの?」
奨は黙っている。抱き締めて欲しい。どこにも行かないと言って欲しい。
「奨さんてば!」
ついに秀一が叫ぶ。瞳に大粒の涙がたまり、眼鏡が曇る。
奨は、肩を震わせて泣いている秀一を広い胸板に抱き寄せる。
『クーリングオフはもういいのか?』
「7日は過ぎたし」
『……俺にいて欲しいのか?』
そんなの答えなくともわかるだろうに。だから秀一はわざとツンとした。涙を誤魔化して。
「お腹の痛みも慣れたし。もうそんなジャマでもないから…い、いたければ居れば……」
『そうだな、折角住み慣れたし、バディの活動は始まったばかりだからな。家賃もかからんし』
「家賃なしご飯エッチつき物件とか僕優良過ぎる。居候、穀潰し、ニート幽霊、働け」
『なんでいつも急に辛辣になる?俺を苛めないと死ぬ病か?黙れ』
「……黙らせたいなら塞いでよ」
肩口に顔を埋めて泣いていた秀一は顔をあげる。そして背の高い彼を見上げて目蓋を落とした。
優しい口付けが落ちてくる。
こんなにカッコよくて優しい、素敵な彼がどうして霊なんだろう。
どうして、死んでしまったんだろう。
どうして生きていないんだろう。
消えてなんか欲しくない。
「んッ……」
自身の涙が唇まで溢れてきて、二人は塩辛い味を共有しながら唇を合わせる。
最初は怖かった彼の舌だが、今はむしろないほうがもどかしい。
秀一は積極的に舌の絡みを求める。
互いの唾液を啜り、味わい尽くし、呼吸すら飲み込んで貪る。
彼はキスも行為もとても手慣れている。沢山抱いてきたのだろうか。それは男だったのか、女だったのか。あの女の幽霊も含まれたのか。
頭の隅がチリチリする。
彼の口付けに酔いたいのに集中出来ない。
秀一はその感情が嫉妬や独占欲の類いだとまだ気付いていなかった。
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