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第51話

謹慎期間である夏休み期間前半があっという間に過ぎた。 自由に出掛けられるようになった 秀一と奨は、見掛けた地縛霊や死狂を救う活動を続けた。 時には危険なバトルになることもあったし、説得だけで上手くいくこともあった。 身体能力があがろうと、秀一はあまりバトル向きの人間ではない。専ら闘うのは奨に任せる。 しかし、研究が趣味である秀一は頭の回転が速いので、Amyの事件を解決した時のような冴えを発揮して奨を助けた。 経験を積んだ二人はあの廃校舎に出向き、女の幽霊と対峙する日を迎えるだろう。 しかしそれまでにまだ語るべきことがいくつかある。 *** 「ねえ、邪魔なんだけど」 キッチンで洗い物をしている秀一。 そんな秀一にまた、いつものように奨が後ろから抱きついている。 彼はベタベタするのが大好きだ。 体内で大人しくしていてくれたらいいのに、やたら実体化してはこうして秀一にスキンシップを求めた。 淫蕩教師、エロ教師。 彼は小学校教師だから流石に生徒に手を出してはいないだろうが、エッチが大好きなのは間違いない。 食事という大義名分を掲げながら明らかに楽しんでいる節があるし。 「もう、洗い物が済むまで待ってよ」 『シュウが足りない』 「お腹すいたの?」 『……別に空腹だからこうしてる訳じゃない。君の傍にいたいだけだ』 それはわかっていたのだが、つい聞いてしまった。 奨から食事目当てではなくくっついていると聞きたかったから。 奨は秀一が大好きだ。それは間違いない。しかし、二人はまだ恋人同士ではない。あれから二人のもどかしい関係は続いている。 恋人寸前、恋人未満の。 洗い物が終わり、エプロンで手をふきふきする秀一は、はたと思い出す。 「そうだ、奨さん。明日動物園に行かない?」 『動物園?』 「うん、すっかり忘れてたけど貰ってたんだ、チケット」 夏休みが始まった時に、仲良くしている隣家のおばあさんがくれたのだ。秀一の手は濡れているから奨が2枚のチケットを取り出す。 『へえ。新しい動物園か?』 「10年ぐらいは前からあって、確か僕は小学校の時に遠足で行ったことがあるよ。その頃は動物園しかなかったんだけど、今は遊園地も併設されてるみたい」 『愉しそうだな』 「僕、それから動物園とか遊園地、行ったことなくて。両親は仕事忙しいし、友達は……」 その先を言う前に秀一は腕を引かれる。 途切れる言葉。替わりに、奨の胸板に抱き寄せられた。背中に回される奨の腕は、しっかりと秀一を包む。 『一緒に行こう』 「……動物園、デートだって思ってもいいかな」 もじもじしながらのお願いだ。 お出かけ、じゃなくデートしたい。そんな甘えを奨はどう受け取るのか。 『……いいとも』 しっかりした声に秀一の表情が輝く。 暖かくて落ち着くこの居場所。 秀一は心地よさに息を吐いた。 彼と出逢ってまだ1ヶ月経っていない。それなのに、こんなにも存在が大きい。 「……ありがとう、奨さん」 『礼を言う必要はないさ。それに、俺もデートがしたかったよ』

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