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第64話

二人が席に戻ると連が椅子をガタン、と音をさせて立ち上がった。 「秀一さん、神代先生ごめんなさい!」 勢い良く謝罪を述べると二人に向かって頭を下げる。 「俺、二人が羨ましくなって。幽霊と人間でバディなんてカッコいいなって。しかも二人が凄い仲良しだから羨ましくなって…だからついあんな意地悪なこと言っちゃったけど、本心じゃなかったっす」 「連さん…」 「や、困ってる霊を天国に導くとかマジ大変だし、戦ったりするのは度胸ある行動だと思うし。面白半分には出来ないっすよ。秀一さんは凄い」 手放しに褒められ、秀一は照れてしまった。 『そうだよ、シュウは凄いんだ。だが羽柴君、君も凄い』 奨の言葉に連はキョトンとする。 『小学生の時の君しか俺は知らない。しかし、間違ったことは間違い、正しいことは正しいとハッキリ言える子だったよ。 君は今、自分が良くなかったと判断して人に謝ることが出来た。それは、とても立派な事だよ』 「神代先生……」 『俺は君の成長を生きて見守る事が出来なかったが、こうして立派になった君を見て、とても嬉しく思う。 君は俺の自慢の生徒だ』 生きていたら、同窓会などがあり、奨は先生として集いに呼ばれたりしたかもしれない。 死とはある意味の断絶で、終わりだ。しかし、幽霊として今存在する奨は、繋がっているのだ。秀一を通して現世に。 「先生!」 感極まったのか、連が奨の胸板に飛び込んでひしと抱きつく。 その頭をよしよしと撫でる奨。 そんな二人を秀一は暖かい目で見つめた。もう不安はない。彼はハッキリ気持ちを示してくれたのだから。 後はーー勇気を出して先に進むだけだ。 *** 連と別れ、秀一と奨は二人で遊園地を楽しむことになった。 「神代先生と秀一さんってそういう関係でしょ?見ればわかるよ。ラブラブの二人を邪魔するほど野暮じゃない。 ただちょっと、子供の頃に好きだった…急にいなくなって、もう逢えないと思った先生に逢えて嬉しかっただけだから」 秀一と連はLINEを交換した。 不思議な縁ではあるが、彼とは友達になれるような気がした。 「秀一さん!神代先生、お幸せに!」 手を振りながら去っていく連を二人は同じように手を振り見送った。 *** さて、二人は秀一のリクエストであるアトラクションに向かう。 遊園地の定番、観覧車である。 見上げれば空に届くほどの大輪。いくつものゴンドラが人々を乗せてゆっくり上昇していく。 観覧車に乗るのは秀一の憧れだった。高いところから下を見下ろしたらどんな気分だろう。 しかも、好きな人と二人でその素晴らしい景色を眺める事が出来たら。 『じゃあ、乗ろうか』 「うん…!」

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