硬くなった男性自身の先端がひた、と秀一の後孔に添えられた。 あの時は触手だった。触れた感じが全然違う。秀一は緊張に身を硬くする。 ズプ、と先端がめり込んでくる。 肉を割り、内部に侵入してくる異物に秀一は顔をしかめる。 「あッ……」 痛みがないのは、彼が霊体だから。しかし、圧迫感と存在感はひしひしと感じる。身体全体が作り替えられてしまうような感覚に秀一は戸惑う。 黒霧が象った触手よりも硬くて太く、ハッキリしたモノが秀一を貫いた。 「ひぃ、…！」 奨がのし掛かった為、秀一の身体は強い圧を受けた。開いた脚がぐいと更に開脚度合いを深める。 そのせいで腹筋が押されて、秀一の孔はキュッと締まった、 頭の方に伸ばした足先がぶるぶると痙攣する。 『……熱い、凄く、熱い』 奨の呟きが聴こえた。 彼は怒張を根元まで秀一に埋め込み、熱帯びた声を洩らす。 『シュウの中、トロトロだ』 「……い、言わないで」 彼に犯されている事実をより実感してしまう。 秀一は自身の上にいる彼を直視できず、きつく目を閉じる。 『動くぞ』 容赦のない宣言。秀一は羞恥にまみれながら頷く。 奨が腰を使い始めた。緩やかな動きから段々と速まる。 秀一の体内の怒張が、まるで身体を支配せんとばかり暴れまくる。 「あひぃッ！」 全身が壊れる、裂ける。秀一の細身は奨の激しいピストンに合わせてガクガク揺れる。 「お、なかがッ…！」 内部から破裂しそうだ、と秀一は思った。だが、苦しさより愛しさが強い。そして奥を突かれるごとに、言い知れない快楽が襲ってくる事に気付く。 黒い触手たちも秀一の身体を蹂躙する。男性自身に巻き付いた触手は先走りに濡れ濡れになりながらしごきを続ける。 胸元を責め立てる触手は、真っ赤に腫れあがり震える突起をぐいぐい引っ張った。 全身を犯されて。 ありとあらゆる性感を弄られて。 秀一はだらしなく口を開いて涎を垂らして喘ぐしか出来ない。 「あ、ッ…あ、あ、やああッ！」 されるがままに、上り詰めていく。それは渦潮のように激しい勢いで秀一を飲み込んだ。 「奨さ、僕、もう…ッ」 『シュウーー』 奨が秀一の上に身体を重ねた。上から抱き締め、腰だけの動きに変えて。 求めあうように、すがるように。互いの掌を一つ一つの指までしっかりと重ね絡ませる。 決して離れぬようにと。 『一緒にイくぞ』 力強い声に導かれ、秀一は最高の瞬間に向かう。 「あッ、うん……い、イクッ！奨さん…！あ、あああああーッ」 『俺も出すぞ、シュウ！』 二人の声が重なり、放出に達する。秀一は白濁の飛沫を奨と自身の腹の上にぶちまける。 奨は、秀一の体内にーーたっぷり熱い液を注いだ。 満ちていく、溢れる。 秀一は腸内の暖かさにぼうっとする。 そこに満ちているのは精液ではない。奨そのものだ。 「はあ……」 全身が気だるく汗だくだ。 奨は触手を黒霧に変えて、秀一と自身の身体に付着した精液を余すところなく吸いとる。それはエネルギーだからだ。 結合を解いた奨は、そのままベッドに転がり秀一を胸元に導いた。背中に腕を回してしっかり抱く。 「気持ちよかった？」 『嗚呼、凄く良かった』 奨からその言葉が聞けて秀一はホッとした。自分だけが気持ちよくなるなんて、やっぱり違う。 二人で感じあって、感じさせあうのが心の通った本当のセックスだ。 「奨さん……幸せで僕、溶けそう」 『俺もだ』 ずっとこうしていたい。 このままでいたい。 人が一番恐れるのは孤独だ。 人を変えてしまうのも孤独だ。 彼が傍にいてくれたら、秀一は孤独ではない。 祈りであり、願いでもある。 彼が人間じゃないなんて些細な事だ。こうしてセックスだって出来る。人間の恋人と何も変わらないはずだ… 頭の片隅に感じるわだかまりを秀一は角に追いやる。 夏休みが終わっても、ずっとずっと。二人はこうしていられると信じて目を閉じた。