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第78話
「眠れない夜を過ごす皆さん、眠らないで朝を迎える気満々の皆さん、お菓子とコーラはバッチリ?トイレは済ませた?ホラーチャンネル『真夜中パーティ』始まるよ!」
ハンディカメラを構えた秀一が滑らかに話し出す。が、そこに横から茶々が入った。
「真夜中って今昼間じゃん」
秀一の隣にいるのは奨の元教え子、羽柴連である。
その声はバッチリマイクが拾う。
「ちょっと、連さん!…あー、すみません、実は今日は生配信じゃありません。ゲストを迎えての特別配信ではありますが…」
「だって夜中で出歩くなんて、夏休みでもかーちゃんに怒られるし。俺達高校生なんだからさー」
「連さんてば!」
録画をストップする秀一。連は何がいけなかったのかとキョトンとしている。
「身バレするような事言わないで下さいよー。YouTuberシュウが高校生なのは秘密なんですから」
「そうなんだ、ゴメン。やり直す?」
特に悪びれた様子もない彼に秀一は肩を落とした。
二人はとある場所にて配信用の動画撮影に勤しんでいる。
連からのこんなLINEが来たのは昨日だ。
「秀一さんってYouTuberでホラーチャンネルやってんですよね。実は俺が住んでるアパートでちょっと前に人が亡くなって、以来怪奇現象が起きてるんですけど、ネタになりませんか?」
「死狂の可能性があるかな?」
『面白半分に行くと痛い目にあうかもしれないぞ』
霊は存在する。以前はオカルト全般に懐疑的だった秀一だが、今は本物の霊と暮らしているし、奨とバディを組み、他の霊も何体も見てきた。
見えないだけで、そこにいるのだ、霊は。
普通に暮らす人間の傍に…。
廃校舎での霊の撮影は失敗していた。それから何回か撮影を試みたが、未だに映像は撮れていない。
もし霊の撮影に成功し、真夜中チャンネルで流したらどうなるだろうか。
「そろそろロケしたいと思ってたし。ね、撮影してもいいよね?連さんだって折角ネタに!て言ってくれたんだし」
『死狂かもしれないのだから行くのは確定だ。だが撮影は…遊びに行くんじゃないのだから』
奨がぶつぶつと言ったが秀一はあまり聞いていなかった。
「はーい!じゃあ連さんに連絡しよっと」
ウキウキと連にLINEを返す秀一の姿に奨はやや困った笑みを浮かべる。
なんのかんのまだ秀一は子供だ。
無邪気さが全面に溢れている。
何度か死狂と対峙して危ない目にあっていても、こんなノリだ。
が、奨は気付いていない。
秀一がそんなノリなのは、奨がいるという安心感に基づいていることを。
こんな流れで、二人は連の住むアパートに赴いた訳だ。
動画に出演したいという連と共に、撮影を始めたのだが…
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