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第90話
さて、夕飯後。
秀一と奨は事件の情報を整理することから始めた。
『亡くなった小山田は部屋で亡くなったのだろうな』
「どうしてわかるの?」
『死因が心筋梗塞。つまり発作のようなものが起きて突然亡くなった、と考えられる。また、第一発見者はアパートの管理人なんだろう?なら、部屋で亡くなった、と考えるのが自然だ』
「そっか」
奨の説明に秀一は頷く。
『しかし小山田の霊は部屋にはいなかった。亡くなり方は急ではあったが、現世に悔いが残りはしなかったんだろう』
「代わりに部屋には猫の霊がいた。あ、遺族の前で暴れたのは、小山田さんじゃなく猫の霊?」
荷物を落とした、足元に触れたという行動は猫なら納得である。
『猫が死んだのはいつか、が問題だな。連の話では最近まで生きていた様子だった。老齢にも見えなかった。誰が、なんの為に殺した?
ーー小山田が作画監督をしていたアニメのモデルだったんだよな』
「そうだと思うよ。絵、見る?」
秀一はパソコンで白銀の刃、小山田光弘、と検索した。するとあの猫にそっくりな白猫のイラストが表示される。
『これは間違いないな。小山田は猫を外飼いしていたのかもしれない。なら、きっと猫は彼に懐いていただろう』
「奨さん!これ見て」
秀一が画面を指差す。検索の結果ヒットしたのはイラストだけではなかった。
それはある有名な売買サイトで、個人が匿名で様々な物を好きな値段売ったり買ったりする。
「小山田光弘のスケッチが出品されてる…」
『スケッチが?』
奨は秀一の肩に手を添えて画面を覗き込んだ。
『確かにさっきのイラストと同じ絵柄だな。一体何枚出品されているんだ随分あるが』
人気アニメの作画監督のプライベートな作品なだけに、凄い高値がついている。
秀一は疑問を持った。スケッチがこんなに沢山出品されるなんてあるだろうか。
プレゼントなどで手に入れる機会がないとは言わないが。
そして秀一はある事に気が付く。
『奨さん、見て、ここ。このスケッチのはじっこ』
拡大すると、スケッチの端に薄ら汚れがある。それは猫の肉球のようだ。
『あの猫の?』
「……」
考えこむ秀一。暫くしてから重たい口を開く。
「奨さん、僕は猫を殺した犯人がわかったかもしれない」
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