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第92話

『それより、俺は君達の姿勢に一言申したい。いいか、俺は霊を天国へ送る行為を遊びでやっているつもりはないんだ。 霊は元々は人間や動物、生きていた存在なんだ。 そこには想いがある。 ネタ扱されるのは不愉快だよ』 奨の言葉に二人はハッとした。 自分たちの愚かさに気付いて俯く。 「ごめんなさい、僕ーー」 秀一が謝ろうとするのを連が止めた。 「悪いのは俺だよ。最初にネタ持ち込んだの俺だし。…そうだよな、俺、無神経だった…」 『いや、言い過ぎたよ。二人悪気があったわけじゃないんだ』 奨は大きな手で秀一の頭を、そして連の頭を優しく撫でる。 それは大人の手だ。二人を暖かく導いてくれる手だ。 「そうだ…思い付いた」 ふと、秀一が目を見開く。 「霊をネタにして面白がるんじゃなくて、霊の存在とその寂しさや辛さを伝える内容にして配信したらどうかなあ?」 そんな内容じゃ受けは悪いかもしれない。きっとリスナーたちが望んでいるのは、今までのような、霊についてほじくり返して笑うような内容だろう。 しかし、リスナーの受けを狙うことだけが大事なんだろうか? 「霊はただ怖いだけの存在じゃない。霊にだって事情はあるんだ。奨さん、そう教えてくれたもんね?」 「僕に伝えられるかわからないけど、やってみたい」 やってみなくちゃわからない。 やってみるのがスタートだ。 引っ込み思案を直すために始めたYouTuber。次の一歩は意味のある配信だ。秀一はやりたいことを見つけて目を輝かせる。 「俺はいいと思うにゃ!」 連が後押しする。 『……そうだな。霊は苦しんでいるという事が伝われば』 奨の言葉は重みがあったが、同意が得られて秀一は嬉しかった。 同時、秀一は思った。自分は奨の恋人であり、共にバディを組み活動をしている。 が、彼の苦しみをちゃんと理解しているんだろうかーー 夏休みの終わりが近付いている。 秀一はこの問題に関しても一歩を踏み出そうと心に決めた。 『にゃあん』 猫は呑気に鳴いてる。これから秀一たちに起こる大変な事を知らないからーー。 *** 秀一が小山田の遺族に連絡を取ったことにより出品されたスケッチは盗品であると判明、警察の捜査によって犯人は管理人であると断定された。 管理人は警察の調べに対して、秀一の推理とおおよそ同じ事を話したようである。 ブランカの遺体はアパート裏の花壇に埋められていた。 秀一と連はその場所に猫の玩具と猫が好きな煮干しをお供えした。 『にゃん』 白猫は自分の墓を見つめながら不思議そうにしている。 そう言えば、奨の墓はどこにあるのだろう。同時家族がお葬式をあげて埋葬したに違いないが。 いつか奨の家族に会いに行ったり、墓参りをしてあげたい。 そんな風に秀一は思った。

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