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第106話
秀一は友基と連にLINEで事情を話す。二人との付き合いは短いが、既に秀一にとって大切な友達である。
学校には毎日顔を付き合わせるクラスメートはいる。が、こんな風に困った時に相談できる相手はいなかった。
本当の友達は頻度じゃない。関わりの深さが大事だ。
『秀一が変わろうと、一歩を踏み出したから出逢いが広がったんだよ』
奨はそう言ってくれる。
友基は過去Amyに憑依されていた時期についてのことを話してくれた。
「確かに食欲がいつもより増してたかもしれない。でも、学生の頃に運動部の部活やってた頃から考えたら少ないぐらいだし。
Amyが傍にいてくれた時間に後悔はないですね」
キッパリと言いきる彼は心強い存在だ。霊が見えないのに怯えることもなく、秀一たちの味方をしてくれる。
一方直情的な連は怒りを露にして見せた。
「冗談じゃにゃいっス。霊を邪魔者扱いすんのはそのエーレンなんとかの勝手ルールじゃ?俺も明日の話し合いは同席するんで。ブランカもね!」
すっかり一員だ。勿論、彼も霊を憑依させている立場なのだから、他人事ではないのはそうなのだが。
LINEの連絡を終えると秀一は奨に報告した。
「連さん、明日うちに来てくれるって」
『そうか…秀一の心配をしてくれているのだろう』
「いや、奨さんのでしょ…」
どこか他人事みたいに言う奨は、まだ消えてもいいなんて思っているのではないか。
秀一に不安が過る。しかし、心を強く持たなくては。
***
翌日になると、エーレンフリートが再び秀一の家を訪れた。
先に家に来ていた連に彼は驚いたが、同じ憑依仲間であるという説明に納得、話し合いへの同席と相成った。
「単刀直入に言おう。粗事は避けたい。奨、そして猫の霊が大人しく地上への未練を清算し、自ら天国に行くと言うなら、私は何もしない」
いきなり猫が連の身体から離れて実体化し、テーブルの上に乗った。全身の毛を逆立てフーッと唸りながらエーレンフリートを威圧する。
「おいおい猫ちゃん、やめてくれよ?私は動物好きなんだ」
「ブランカ、よせ」
連の言葉に猫は大人しくなった。すっかり猫と連は仲良しらしい。
連の膝に乗り丸くなる様子はすっかり飼い猫のようだ。
エーレンフリートはやれやれと肩を竦める。
「君達は霊をなんだと思っているの?生き物は何故死ぬのだと思うんだい?生を全うし、然るべき場所に行くのは当たり前のことでは?」
霊を地上から排除するのを是とするエーレンフリートに秀一は食ってかかった。
「でもッ!霊は元々人だよ、気持ちや想いがあるのだって当然じゃないかッ!」
エーレンフリートは一瞬眉をしかめたが、畳み掛ける。
「ーー奨、君はゴーストスイーパーまがいの活動をし、霊たちを天国に送っていたんだろう?
自分だけが居残ろうなんて、図々しくない?」
『……そうだな、言う通りだ』
「神代先生ッ!」
あっさりと認めた奨に今度は連が声を荒げた。
「陰陽師だかなんだか知らないけど、神代先生がいなくなったら秀一さんがどうなるかわかってんのかよッ!」
「むしろ憑依させ続けたら方が人体被害が出るんだよ」
呆れたような口調に連がどん、とテーブルを叩いた。猫より荒っぽい。
「んなもん覚悟の上なんだよッ!好きな人と一緒にいるっていいことばかりじゃねえよッ!」
そこまで二人の為に必死になる連を見て、秀一は深く心打たれる。
でも、ここでしっかりしなくちゃいけないのは、自分だ。
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