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第15話
-今日は朝食の時も、教室でも治朗の顔を見る事ができなかったし…避けまくってしまった。
皆にも変に思われたかもしれない。
自分でも思うくらいだし。
でも、何故、俺が治朗から逃げ回らないといけないんだとは思う。
逃げ回らなきゃいけないのは治朗の方だろ。
ヤられたのは俺の方だぞ。
俺は被害者の方だから。
………それに俺が罪悪感を感じなきゃいけない相手は彰であって治朗じゃないから。
…いや…彰の顔をまともに見る事もできなかったけど…。
…………………………………………。
(…忘れよう)
そうさ。
この俺が、治朗にいいように嬲られて翻弄されたなんて…。
誰が思うよ。
その反対はあっても……。
この身体と腰の痛み、身体の中にまだ残る異物感さえなければ、夢かと思うところだ。
そうだ。
夢だ。
悪夢でも見たと思って…。
忘れよう。
(…あんな…)
「…よっ、昨日ぶり」
トイレが終わり手を洗っている時、治朗の声がして鏡を見ると…晴れやかな顔で治朗が鏡越しに俺を見ていた。
「今日、ず~っと俺を避けていたでしょ?つれないよな~」
鏡越しに治朗と目が合って…目を逸らす。
「…あれれ~?どうしちゃったのかな~?なんか冷たくな~い?俺と樹生ちゃんの仲でしょ。昨日ですっごく仲良くなれたと思って喜んでいたのに~」
「……………」
俺が俯いたまま黙っていると、治朗の手が俺の腰をズボンの上から鷲掴みした。
「止めろ!!」
反射的に、その手を右手で振り払う。
「な~んだ、喋れるんじゃない。昨日、声出しすぎて喉を痛めたのかと心配しちゃったよ~」
昨日の事を言われて、血の気が引く。
「……昨日の事は…忘れてくれ…」
「え、無理」
早すぎる即答にギョッとして、思わず鏡越しに治朗の顔を見る。
「無理だよ~、だってオレの脳裏にはもう昨日の樹生の姿がインプットされてるんだもん…いや~、まさか樹生があそこまで乱れるとは思わなかったよ~…思わずねだられるままに何回もヤっちゃったじゃん」
(…この…っ!!)
振り向きざま治朗の頬を殴ろうとした右手は…治朗の左手に遮られ、反対に治朗の右の平手が俺の左頬を打つ。
思わぬ反撃。
思ってもいないほどの強い力。
俺はみっともなくトイレの床にひっくり返り、その拍子に顔面を壁に思い切りぶち当ててしまい、目の前に火花が飛ぶ。
「………あ………?」
顔面を強打した時に鼻を打ったらしく、生暖かいものが鼻を伝って床へ落ちる。
-鼻血らしい。
(頭がクラクラする……)
治朗はトイレの床に倒れ込んだままの俺の顔を覗き込むと、可笑しそうに笑う。
「ごめんね~?オレ、こんな顔だから幼い頃から色々と危ない目に合う事があって、格闘技を習ってたんだよね」
治朗に叩かれ、鼻血を出したショックで頭がクラクラしたまま動けない俺は、治朗に手首を掴まれトイレの個室に引きずっていかれた。
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