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変わらないもの、変わりつつあるもの(俺)
師範が可愛い。
見た目が綺麗なのは相変わらずだが、それに加えて最近は仕草や発言が、今までよりずっと可愛くなってきた。
俺と師範は、ウィム達が町の外れにとってきた宿の一室で、汗を落としていた。
この宿を含めほとんどの宿に浴場はない。代わりに、希望者には湯の入った桶と手拭いが配られる。ここでは有料だったが、無料のとこもあるな。
俺は、上半身裸のままで、バクバク騒ぐ心臓に気付かないフリをしつつ湯桶で濡らした手拭いを絞っていた。
……今から、これで、師範の身体を拭くために。
ちょっと前まで「背中拭こうか?」なんて聞いても「大丈夫ですよ」とか「一人でできます」とか言ってた師範が、今日は「じゃあ……お願いしちゃいましょうか……」なんてさ、ちょっと恥ずかしそうに照れた顔で言うんだよ!!
可愛すぎるだろ!?
「じゃあ……えっと、熱かったら言ってくれよ?」
俺が前置きをしながら布を手の平に広げれば、ベッドに腰掛けた師範が肩に一枚きり掛けていた肌着を下ろした。
「はい、お願いします」
目の前に現れた滑らかな素肌に、思わずごくりと息を呑む。
窓から差し込む夕陽の茜色が、師範の白い肌の輪郭を淡くなぞっている。
すげー綺麗だ……。
芸術品とか美術品みたいなものは、俺にはよく分かんねーけど、師範がとんでもなく綺麗だってことはわかる。
俺は、息を止めるようにして、傷ひとつない師範の背中を隅々まで拭き上げた。
「……拭けたぞ」
「ありがとうございます、ギリル。とっても気持ち良かったです」
そう言って微笑む師範の横顔も、夕陽に照らされると赤く色づいて見えてしまう。
違うだろ。
今の『気持ち良かった』はそういうんじゃねーから。
かぶりを振って、俺は手拭いを湯桶ですすいだ。
「もう……終わりなんですか?」
「……ん?」
師範の言葉に顔をあげれば、肩ごしに振り返る師範と目が合う。
師範の深い闇色をした瞳が、どこか寂しげに俺を見つめていた。
な、なんだよこれ……。
まさか、俺の事……誘ってんのか……?
俺は師範の瞳から目を逸らせないまま、手探りで手拭いを湯桶からあげると、雑に拭った手を師範に伸ばした。
師範は、キチンと絞れとか、手元を見ろとか、そんないつもの注意をする事なく、嬉しそうに目を細めた。
なんなんだよ。可愛すぎるにも程があるだろ?
ベッドに乗り上げると、古そうなベッドは小さく軋んだ音を立てた。
「師範……」
囁いて、その滑らかな肩に唇を落とす。
応えるように、師範が嬉しそうに俺の名を呼んだ。
そこからは、もう止まらなかった。
師範の白い首筋に顔を埋めて、夕陽が彩る師範の輪郭全てをなぞってゆく。
師範の身体はいつも敏感で正直で、ひんやりとした師範の肌が俺の与える刺激で次第に汗ばむ様に、俺はどうしようもなく煽られる。
「前、触っていいか?」
俺の言葉に師範は戸惑うように銀色のまつ毛を伏せると、ふるふると首を振る。
「ダメか?」
「ダ、ダメではないのですが、その……汚れているので、拭いてから……」
「じゃあ、俺が拭く」
「ぇ」
「下脱いで」
ぬるくなった湯桶で手拭いを絞り直して、俺は師範の座るベッドの前に膝をつく。
師範は、恥ずかしそうにしながらも、俺に言われた通りに下衣を太腿まで下ろしていた。
おずおずと俺を見つめる師範が、やはり今までよりも素直で、なんだか可愛くてたまらない。
俺は、中途半端に下ろされた下着を足から抜き取って、そっと優しく、師範のそれを手拭いで包む。
師範の肩が小さく揺れた。
後ろほどではないにしろ、どうやら前も師範にとって触れられたくない場所らしい。
まだ薄明るい室内では、カタカタと小さく師範の膝が震えているのが分かった。
……よくまあ、こんだけ怯えるくせに、俺にいいなんて言えるよな。
「拭けたよ」
言って立ち上がれば、師範がホッと息を吐いた。
「ぁ……、ありがとうございます……」
俺は手拭いを適当に洗って、すぐに師範を背中から抱きしめた。
「せんせ、こっち向いて」
師範が俺の方を向くためにベッドに上がる。
俺はベッドの真ん中に胡座をかいて、師範を膝の上に乗せると口付けた。
俺に応えて開いた唇に、その内に、たっぷりと愛を注ぐ。
「……ん……」
師範の白い肌は、いつものひんやりとした温度に戻りつつあったが、それをもう一度丁寧に愛撫する。
指で、唇で、俺の身体全てで。
「ぁ……っ、ぅんっ、……ぅ、ぁ……っ」
師範のかすかな喘ぎが、俺の耳に甘く届く。
艶やかな肩までもが茜色に色付いたのを確認して、俺は慎重に師範のものへと手を伸ばした。
「っ……!」
ビクリと師範が身体を揺らす。師範の身体が強張るのがよく分かった。
師範はいつも俺の愛撫に可愛く反応してくれるけど、師範のものが立ち上がっているのを見たことはない。
ふにゃりと柔らかいままのそれを、俺は優しく包んで扱く。
師範の反応は、俺のための……演技なんだろうか。
そう思う俺に、師範は申し訳なさそうに謝った。
「すみません……。私はこの姿になってから、一度も……」
「一度も……?」
「その、ギリルのようには……」
師範の視線は俺の股間に注がれていた。
ズボン越しにも、俺のがギンギンに立ち上がっているのが分かる。
「立ったことねーのか?」
「……は、はい……」
恥ずかしいのか、それとも申し訳なく思ったのか、師範はどこか苦しげに目を伏せた。
「ふぅん。……それなら、いいんじゃねーの?」
「ぇ」
「今日の、この状態は。マシな方ってことなんだろ?」
確かに師範のものは俺のに比べればぐったりしているが、それでも柔らかな中にわずかに芯を感じる。
師範は、俺の手に包まれる自身の姿に驚いた顔をした。
なんだよその顔、可愛いな。
師範をゆっくりベッドに押し倒して、深く口付ける。
片手で師範のを扱きながら、片手で師範の胸を捏ねる。
師範のくぐもった声が、俺の中にいくつもいくつも溜まる。
俺の手の中で、師範のものが少しずつ質量を増すのが、俺にはたまらなく嬉しかった。
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