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◎後輩がやけに可愛い

滑らかな白い肌を朱に染め上げて、青年はぼんやりと俺を見上げた。 涙のたっぷり溜まった榛色の瞳がゆっくり瞬けば、ぽろりと涙の粒が零れる。 思わずそれを受け止めようとして、触手が残っていない事に気付く。 俺の触手は今、マルクスの両手首を纏め、両脚を一本ずつ拘束し、二本で胴体の口を縛り付け、最後の一本はこいつの狭い下の口へ突っ込んでいた。 マルクスは電撃による刺激で達したらしく、狭い穴が塞がりそうなほど、俺の触手の先を締め付けてきた。 まだ余韻が残っているのか、時折ヒクヒクと痙攣するその内側は、今も柔らかく蠢いている。 ……なんか、マジで突っ込みたくなるな。 「ぁ……、せん、ぱい……」 どこかうわ言のようにぼんやりと囁かれて、俺はマルクスを見る。 あの生真面目で、いっつも暗い顔ばっかりしてた奴が、今は俺の前でとろりと蕩けそうな表情をしていた。 「ビリビリすんのが、そんなに良かったか?」 問いかけて、マルクスの内に入り込んだ触手の先からほんの少しだけ電流を流してみる。 「あっ!! あぁあっ!!!」 青年は、弾かれるように目を見開くと、身体を仰け反らせるようにして身悶えた。 内側がまた、ぎゅっと触手にしがみつく。 荒い息に追われるように、青年が必死で息を吸う。 「……ぁ、……せんぱ……い……、おれ……?」 呂律が回らなくなってきたのか、辿々しく伝えられる言葉が、なんだか無性に可愛く思える。 「お前……、何が起きてんのか、まるで分かってねー顔してんな……」 繰り返す絶頂に、青年の内側から溢れた愛液が俺の触手を伝う。 それを、俺は触手の表面から一滴残さず吸収する。 ああ、やっぱ甘いな……。 こんなに熱く、甘い香りをさせておきながら、こいつはまだ自分が達した事すら分からない様子で、真っ赤な顔をしたまま俺を見上げていた。 「ぅ、ん……っ、おれ……、ど、して……」 不安そうなその背を支えるように腕を回して抱き寄せれば、ホッとするような表情を見せた。 ああくそ、無防備な顔しやがって。俺に抱かれて安心してどうする。 後輩の小さく尖った胸の先端を指先で捏ねながら、触手で内側をそっとかき混ぜてやれば、水音が部屋に響く。 「う、あぁっ、んっ、うんんんっ、あぁんっ」 俺の与える刺激に、青年はビクビクと身体を弾ませて素直な反応を返す。 それが酷く可愛く見えて、俺は内心焦りを感じた。 潤んだ瞳、赤い頬、汗ばんだ額にかかるサラサラの髪、物欲しそうに開かれた半開きの口、その全てに誘われているような気になって、俺はかぶりを振る。 心を無にするように、後輩の内側に挿し入れた触手に集中する。 はじめ指一本分ほどの太さだった触手は、今二本分程の太さになっていたが、それを慎重にもう一回り太くする。 「あっ、ああぁあ……ん……っ、せんぱい、の……っ、おっきく、な……」 マルクスが零した小さく震えるような声は、俺の耳に酷く甘く届いた。 その声に煽られるように触手を奥へと突っ込めば、マルクスは快感を逸らそうとしてか、白い首を俺に晒して大きく背を仰け反らせた。 「あぁあぁあああっ! っ、またっ、きちゃ、あぁああああんんんんんっっっっ!!!」 言葉とともにマルクスの内側がぎゅうぎゅうと締め付けてくる。 「んっ、んっっっ!! な、に、これぇっ!! わかん、な……っっっ!!!」 見開かれたままの榛色の瞳から、ポロポロと涙が溢れる。 「……お前はな、俺にエロい薬を盛られて、さっきからもう何度もイッてんだよ、分かるか?」 「……っ、……!?っ、……???」 切なげに眉を寄せて、快感に翻弄されながらも、青年はフルフルと首を振る。 いや、何が分かんねぇんだよ。何が。 「……ぁっ、……っ、くぅ……っ」 全身を繰り返し痙攣させて、息すらままならない様子の後輩に、俺はしばらく手を休めて呼吸が整うのを待つ。 「は……ぁ……。っ、おれ……、そんな、出して、な、い……です……」 後輩は、荒い息の合間から、やっぱり敬語で俺に答えた。 「いや、出さなくてもいーんだよ。これも十分イッてる状態なんだよ」 半眼で、マルクスを眺めながら教えてやれば、頭の固い後輩も、ようやくそういうものなのかと思ったらしい。 「ん……っ、そう、なんです、か……?」 「だってお前、気持ちイイだろ?」 言って、後輩の内側をそっと突いてやれば、応えるように内壁が俺の触手を優しく絞る。 「んんんんっ、は、い……っ、すご、く、っ、あっ、きもちい……です……」 息を詰めながらも素直に答える後輩が、どうにも可愛い。 それにしても……見た感じ無ぇんだよな、クリが。 内側も、探った限りそれっぽいモンはねぇし……。 まあブツもぶら下がってんだし、女と全く同じ仕組みにはなってねぇんだろうが、どこかに……。 俺が内側をゆるゆると探る間も、後輩は快感を受け止めては甘く喘ぐ。 「ぅ……、ぁ……んん……っ」 ああ、もしかして、こっちか……? びしょびしょに濡れた内側を少しずつ押し広げるようにしながら探れば、男性器が生える根本あたりに、びくりとマルクスが跳ねる場所があった。 「あ……っっ!! っ、や、あっっ!!」 よっぽど刺激が強かったのか、何が起きたのかと驚くような瞳に、ほんの少しの恐怖が滲んでいる。 「ここか……?」 少しだけふっくらと内側が盛り上がったその奥に、少し弾力のあるものが感じられる。 確かめるようにそこを押してみれば、その度にマルクスは高く嬌声をあげた。 「あぁっ! やぁぁっっ! やだっ、そこ……やめ、て、くだ、さっっっ!」 必死で首を振って身悶える青年。 拘束された手足の先までもが、じたばたと少しでもその刺激から逃れようともがく。 「へえ……。ここ、な?」 確信を持って、そこをぐいと突き上げる。 「んんんぁぁああああああっっっ!!」 強烈な快感に、マルクスは身体中を強張らせるようにして達した。 よほど全身に快感が走ったのか、拘束された足の指先までもがぎゅっと丸まっている。 「ほら、またイッただろ?」 揶揄うように声をかければ、俺の言葉にすら感じるのか、青年はびくりと肩を揺らして、何度も何度も短く声を漏らした。 「あっ、あっ、あ、あぁっ、ぁあっ、ぁああっっ」 切なげな声と同時に、ふわふわと柔らかく解されたその内側が、繰り返し痙攣する。 まるで、俺の触手を奥へ奥へと誘おうとするようなその動きに、思わず俺の芯にも熱が宿る。 くそ、こんなとろっとろになんのかよ……。 ここに突っ込んだら、さぞ良いだろうな……。 煽られるままに、マルクスの感じるそこをゆるゆると刺激する。 「や……っ、や、だ、せんぱ……い……っ、そこ……あっ、んんんっ!!」 元々高い青年の声が、一層高く鼻にかかるような甘さで響く。 甘い甘いその声に、俺の喉の奥までがヒリつく気がする。 「嫌じゃねぇだろ? イイんだろ? ほら、言ってみろ」 言葉と共に内をトントンと押し上げてやれば、言われるままに後輩は素直な言葉をこぼす。 「ぁ、あっ、イイ……っっ、そこっ、気持ちっいい、……ですっ、ぁっ、せんぱいぃっっ」 まるで俺を求めるように、切なげに細められた榛色の瞳から、ほろりと一粒涙が零れる。 ……ああ、こいつが欲しいな……。 欲望が、腹の底にどうしようもなく溜まってゆくのを感じながら、青年の内側で触手をもう少し太くする。 「んっ、あっ、あっっ、おっき、く、な……る……っっんっ」 最初あんなに狭かったココも、繰り返す絶頂と快感に緩み、じわじわと広がってきた。だが、まだ俺のモノを飲み込むには狭すぎんな。と、そこまで考えてから、慌ててかぶりを振る。 フリだろ、フリ。 本当に突っ込む気になってどうすんだよ。 「せんぱ……せんぱ、い……、あぁ……ん、せんぱぃぃ……」 頬を真っ赤に染めて、何でそうも俺を呼ぶんだ、こいつは。 「ぅ、あ……、ぁあぁ……っ、凄い、そこ、気持ち……ぃっ……っぁあんっ」 後輩の潤んだ瞳は、ここではないどこかを見つめている。 快感に沈むうっとりとした表情には、いつもの暗い影はどこにも残っていない。 ……もうこんだけ腰が砕けてりゃ、暴れることもない、か……? 俺は、用心しながらも後輩の腕を一本だけ自由にしてみる。 縛を解かれた手は、突然の解放に戸惑うように空を掻いてから、次々襲う快感にぎゅっと腕を縮めて胸元に寄せ、口元を覆った。 その姿をどこか残念な気分で眺めてから、そんな自分に苦笑を浮かべる。 おいおい。まさか、俺はこいつに手を伸ばしてほしかったってのか。 一方的に襲っておいて、その上俺を求めてほしいだなんて、虫が良過ぎるにも程があんだろ。 自身の傲慢を噛み潰しながら、そっと体を離す。 こんな、まだどこか幼さすら残る青年の色香に、俺が当てられるなんて情けねぇ。 少し頭を冷やした方がいいな。 途端、マルクスがハッと俺を見た。 「せんぱ……、せんぱいっ、離さ、ないで、くださ……」 自由にされていた左腕が、俺へと伸ばされる。 榛色の瞳から、ほろほろと涙が溢れた。 「おれ、を、おいてかない、で……」 悲しみをいっぱいに浮かべて、縋るように、後輩の手は俺の胸元に下がっていた髪の端を掴む。 ――な…………。 思わず息を呑む。 いや、落ち着け俺。こいつはちょっと意識が混濁してるだけだ。 俺を求めてるわけじゃない。 それでも、震える白い指先が、うねった俺の髪の端を必死で握り締めている。 気付けば俺は、その手を両手で包んでいた。 「……大丈夫だ。側に居る」 囁けば、ホッとした気配がマルクスから滲む。 違うだろ。 お前をこんな風に追い詰めてるのが俺で、お前が縋るべきなのは俺じゃないだろ。 とはいえ、今ここにマルクスが縋れる相手は俺しかいない。 仕方なくだ、仕方なく。 俺に気があるわけじゃないし、俺だって、こいつにそんなの求めちゃいない。 ……だろ? 俺は、どくどくと煩い胸の音を宥めるように、深呼吸をした。

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