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先輩の声

身体が燃えてしまいそうに熱い。 溶けてしまいそうだと言う方が、近いかも知れない。 お腹がぎゅうぎゅう苦しくて心臓がどくどくしてて息がうまく吸えなくて、身体の隅まで気持ちいいのがいっぱいで、もうおかしくなりそうだった。 それでも、俺の背を先輩の大きな手が支えてくれていて、それが心を支えてくれてるような気がしていた。 もう片方の手は、俺の胸を優しく撫でている。 先輩のゴツゴツした大きな手が俺の胸の先でぷっくり腫れたそれを捏ねるたび、ビリビリするくらい感じる。 声が止められない。 もう、何も考えられない。 ただただ気持ちが良くて、良すぎて、どうにかなってしまいそうで、怖かった。 そんな時、何の前触れもなく、先輩の手がするりと離れた。 俺の背を支えてくれていた手も、俺を優しく撫でてくれていた手も。 どうして? わからない……。 あの日みたいに、何の前触れもなく。 彼女みたいに、ほんの一瞬で、居なくなってしまう。 俺を置いて……。 いやだ。 おいていかないで。 俺をひとりにしないで。 寂しくてたまらなくて、俺は必死で手を伸ばした。 先輩には届かなかったけれど、先輩の髪が一房、何とか指に引っかかる。 それを、とにかく夢中で握り締めた。 体の真ん中が熱い、苦しい、怖い、……たすけて、先輩……。 おねがい、そばにいて……。 自分がなんて口走ったのかはわからなかった。 でも、先輩は俺の手を振り解かなかった。 大きな両手が、包むように俺の手を握ってくれて、ひどく安心した。 先輩は静かな声で、大丈夫だと言ってくれた。 側にいると言われて、嬉しかった。 ぼんやりと滲む視界の中で、翠の瞳を探し求める。 やっと見つけた先輩の瞳は俺をまっすぐ見つめてくれていた。 「せん、ぱい……」 俺の縋るような声に、先輩の大きな手のひらが俺の頬を包んで応えてくれる。 それがなんだか、すごくうれしい。 大きな手に頬を擦り寄せれば、先輩の指がゆっくり俺の涙を拭う。 どうして……こんな事になっているんだろう……。 でも、この人は多分、俺に乱暴な事をしようとはしていない。 昔も、今この時でも、俺を大事にしてくれている。 それだけは、やっぱり、間違いじゃないと思う。 「痛むとこはねーな?」 先輩の低い声が、囁くように問う。 俺の、耳元で。 ざらりとした声が、ゾクゾクとした感触を耳から脳へと伝える。 「……ぁ……っ、はぅ、……ぅっ」 俺の頭の中まで、先輩の声に犯されている気がした。 「せんぱ……ぃ、の、声……っ、気持ち、いい……です……」 そっか……、俺……今、先輩に、犯されてるんだ……。 ふわふわした頭がようやく事実に気付く。 「お前……っ」 いつも余裕たっぷりの先輩が、少し赤い顔で、切羽詰まったように俺を見ている。 先輩も気持ち良いんだろうか。 「せんぱい……。ゼスタせんぱい……」 うわ言のように俺の口から漏れる声は、先輩を呼んでいた。 「マル……」 先輩が低い声で俺の名前を呼ぶ。 あの頃の彼女のように、短く略して。 俺をマルと呼んでくれる人は、もう世界にこの人しかいなかった。 俺の手首を拘束していた触手が、縛を解いてスルスルと降りてくる。 優しく俺の頬を撫でて、肩を背をなぞるようにしながら。 先輩のヒヤリとした触手が触れるところが、次々と熱を持つ。 「ぁ……、せんぱい……さわってくれる、とこ、ぜんぶ……きもち、い……」 ゾクゾクと駆け上がる快感に身を震わせて、俺は自由になった手を、先輩へまっすぐ伸ばした。

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