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◎試される理性
おいおいおい、効きすぎだろ?
明らかに媚薬効きすぎだろ?
いや、惚れ薬とかじゃねーよな?
それとも何だ? こいつは普段から俺のこと、そんな好意的に見てくれてたってのか?
確かに、こいつは真面目過ぎで何でも面倒臭く考えがちな奴だが、元から素直で可愛げのある性格の後輩ではあった。
俺に、まあそこそこ懐いてるとは思ってた。
薬のせいなのは分かってる。
……でもなんか。
それにしたってよ……。
……ちょっと可愛過ぎねぇか?
俺は、俺の手の平にすりすりと頬を擦り寄せて目を細める後輩の姿に、正直動揺していた。
繰り返し、求めるように名を呼ばれて、思わず呼び返す。
熱に浮かされて蕩ける榛色の瞳が、俺をじっと見上げてくる。
もう抵抗をしそうにもない腕の拘束を解けば、それはやはり、俺に向けて差し出された。
……この手を、俺が取ってもいいのか?
自身の良心に責められながらも、手を取らないのもまた薄情な気がして、俺はその手を躊躇いつつ握る。
マルクスは、そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、縛られた腹から上だけを精一杯起こして俺へ縋るような瞳を向ける。
「せんぱい……、おれ……からだ、あつく、て……」
はぁ。と青年が吐き出す吐息は酷く熱を孕んでいる。
苦しげに寄せられた眉が、今もまだこいつの中に熱が渦巻いていることを伝えていた。
「…………っ、せんぱ、……い……」
求めに応えるように、触手で両脚と腹を縛り上げたままの身体を引き寄せる。
俺の手の平に擦り寄せてくる頬は、きめ細かく滑らかだ。
色の白い肌は、頬も、はだけた胸元も、今は朱色に染まっている。
それを優しく撫でてやりながら、顎のラインをなぞって、首元を撫で下ろし、ゆっくり胸元へと指を這わせる。
「はぅ、……ん、……ぁ、あ、……んっ」
俺の指が動くたび、敏感に感じるらしい青年が声を漏らす。
胸の尖りは、薬のせいか痛々しい程に赤く染まり、ぷっくりと立ち上がっていた。
指の先でキュッと摘めばマルクスの身体が小さく跳ねる。
「ああぁんっ!」
艶やかに啼く後輩の甘い声に、どくりと俺の芯が熱くなる。
「お前、ここ……感じんのか……?」
俺の声に、マルクスは喘ぐようにして答える。
「ぁ……むね……、こん、な、かんじた、こと、なかっ、ぁああんっっ!」
胸元へ這わせた触手で、空いていた方の小さな突起も包み込めば、マルクスはまた声を上げた。
体内へ挿し込んだままの触手もゆるゆると動かしながら胸を弄れば、後輩は俺の指が動く度、切なげな声で啼く。
「あっ、あぁっ、や、あ、っぁあああっ!」
触手の内でぐにぐにと揉み潰していた尖りを、指の動きに合わせて吸い上げてやれば、青年はみるみる追い詰められる。
「んんっ、んんんっ、すご、い、んんっ、きもち、い……っっ、いいっ、あっ、ああぁんっ」
細い肩が、腰が、跳ねる。
俺の指に指を絡めるようにして必死で手を握っていたマルクスが、不意に指先を解く。次の瞬間、可愛い後輩は俺の首へ両腕を回して抱き付いてきた。
「んん……っ、せんぱ……、せんぱいぃ……」
俺の首元にマルクスの頬がすりすりと擦り寄せられる。熱いほどに火照った頬。サラサラとした髪は甘い香りで俺の喉元をくすぐる。
っ、おいおい、何だこれ、可愛すぎんだろ!?
思わず手を止めた俺に、マルクスは縋るような声でねだる。
「ぅぅ……、せんぱぃ、……止めないで、くださぃ……」
――っ、お前は俺の理性を試してんのか!?
クラクラする目眩を堪えて内心叫ぶ。
どう頑張ったところで、腹の奥がふつふつと煮えてきそうな熱い感覚は抑えきれそうになかった。
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