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夢の中へ

先輩の厚い胸板に身を寄せれば、いつもひんやりしてる先輩の温度が、いつもより温かかった。 自分の心音でドクドク煩い俺の耳に、先輩の鼓動の音が微かに届いている。 先輩は生きてる。 先輩は、まだ生きてるんだ……。 そんな当たり前の事に、何故か感動してしまう。 どこか励ますようにぽんぽんと頭を撫でられて、俺は確信する。 やっばり先輩は、この行為を俺のためだけにしてくれていたんだ……。 なんだか、自分ばかりが我儘を言っているような気がして、俺は情け無さにじわりと俯く。 視界に入ったのは、俺自身を飲み込んでいた先輩の触手……。俺の放った精を閉じ込めたその内側がごぽりこぽりと小さく蠢いて……、見る間に、俺の白い体液は先輩の触手に吸収されて消えてしまった。 え、ええ……? ふと、今朝のシミひとつ無かったシーツを思い出す。 もしかして、先輩は昨夜もこんな風に、俺のこれを……飲んで……?? 「先輩……」 「ん? どうした?」 「俺の……、吸収して、気持ち悪くないんですか……?」 ぼんやりした頭のまま、考え無しに呟いた俺の言葉に、先輩の身体が小さく強張った。 きっと、こんな風に密着していなければ気付かなかったほどの小さな変化。 「……お前は、そう思うか」 ボソリと呟いた先輩の声から、その感情は読めなかった。 もしかして、俺は失礼な事を言ってしまったんだろうか。 もしかして、俺は先輩を傷付けたんじゃないだろうか。 「ほら、俺が隣にいてやるから、もう寝ろ」 先輩は面倒臭そうにそう言って、全部の触手で俺を包むようにしてベッドに寝かせてくれた。 まだふわふわしたままの頭と甘く微睡む身体に、サラリとしたシーツの感触とひんやりした温度が気持ち良い。 「封印帯解くか?」 「あ……、このままで……、俺、自分で解けます、から……」 「キツかったり痛かったりしないな?」 「大丈夫、です……」 瞼が重くて、目をしぱしぱさせていたら、先輩の手が俺の瞼を上からそっと撫で下ろした。 「それならいい。……お前は、我慢しなくていいから。もう寝てしまえ」 ほんの少し苦笑を含んだ低い声が、俺を撫でる。 あんなに昂った身体が、今はずっしりと重くて鉛のように感じる。 眠りの淵に、もう片足まで入っているようだ。 ああ、でも俺、服を……着ないと……。 また……、せんぱいに、面倒を……――。

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