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File.0-2  違和感の正体は

「でもさ、それで誰が犯人なんだよ。俺、さすがに食べてないぞ? 自分で食べておいてない、っていうほど馬鹿じゃないし」 「ルインは馬鹿だからあり得る」 「あのなぁ!」 「はいはい。ケンカしない。まず最初に僕が感じた少し不自然だと思うところ。違和感を言うね。ルイン、おやつと言うのは何を買ってきたのかな?」 「プリンだ! やっぱプリンだろ!」 「プリンと言うと、あのいつも並んでいる店のプリンかな。僕は今、初めて。おやつがプリンだということを知ったけれど。先におやつの正体を当てていた人がいたよね」 「……」 「え、え? 誰?」 僕とシャルを交互に見回すルインを見て、落ち着いて。ともう一度言う。そして、黙ってしまったシャルの顔を覗き込む。 「シャル、君は最初にお前のプリンなんて知らない。そう言っていたよね?どうしてプリンだと分かったのかな?」 「それは……喉が渇いた時にコッチに来て、冷蔵庫を開けて……」 「シャル! 食ったなら食ったって言えよ。別に一個くらい分けてやるし。ただ、急に減ってたからビックリしただけだし」 「うん。シャルが言っているのも嘘じゃないと思う。僕が本を読んでいた時に誰かが通る気配がしたのは確かだから。シャルは飲み物を取りに来たときにプリンを見たはずだ」 シャルは静かに頷く。ここまでは落ち着いて聞いていれば分かることなのだけれど。シャルが少し元気がないのは、まだ別の理由があるはず。 「ここからは憶測なのだけれど……シャル。シャルも冷蔵庫で何かを冷やしていた。違うかな?」 「そう。でも、ハスも冷蔵庫、開けた?」 「誰も見ていないから証明はできないけれど、僕は昨日の晩から冷蔵庫は開けていないよ。飲み物も温かいものを飲んだから。ご飯をどうしようかなとは思っていたけれど、読書に熱中してしまって、食べ損ねていたし。だから、ここからは推理」 僕が静かに言葉を紡ぐと、皆、黙って聞いてくれる。 これは誰が悪いわけでもない、偶然が重なって起きたことだから。 「シャルは昨日外出していた。そして、シャルも次の日に食べようと思って冷蔵庫で別のものを冷やしていた」 「うん」 「何だよ、別のものって」 「うん。昨日は確か新作が出る日だった気がするから。同じ店のゼリーの新作の日、だよ」 「ゼリー?」 シャルは頷き、ルインは不思議そうに首を傾けた。僕の推理は当たっていたようで少しホッとする。 「そう。だから、シャルは飲み物と一緒にゼリーを食べようと一つ手に取って部屋に戻った」 「でも、ゼリーとプリンは全然違うぞ?」 「そうだね。でも、あの店のゼリーとプリンの違いはどこだか知っているかな?中身が見えない容器に入っているから、違いは蓋の色だけ。後は形も大きさも一緒だから。それに不幸が重なった。先に買ったのはシャルで、後から買ったのはルイン。たまたま同じ場所に、たまたま同じ店の、たまたま同じ形の容器が並んでいたら……どうなるでしょう?」 「う……」 「うん。奥にシャルの買ったゼリーが入り込んでしまって、手前にルインのプリンが置いてあったんだ。冷蔵庫に手を伸ばしてパッと手前のを取ってしまって。気づかずに部屋まで戻った。それでも開ければ気づく可能性はあるけれど。シャルの部屋は……」 「うわ、シャルの部屋っていつも暗いもんな。しかも何かしてる時のシャルはいちいち手元なんて見てないだろ」 「僕たちだからこそ起こってしまったことかもしれないね。でも、それでも。食べたら味が違うからそれは分かると思うけれど……」

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