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File.0-3 今度は仲良く
僕が問うと、シャルはさらに俯いて言いづらそうにしている。ルインを見ると納得したので怒ってもいないし、そうかよ。と楽しそうに笑っているくらいだ。
「……食べたら美味しかったから。思わず全部食べた。一応謝ろうとは思ってた。ごめん」
「俺の置いたところになかったから減った! って思ったんだよな」
「逆にルインが数が少ないことに気づいたことには驚いた。奥にゼリーもあるはずなのに」
「一直線に綺麗に並べてたし。列が乱れたらすぐ分かる。俺も手前しか見てなかったから奥にゼリーがあるのは気づかなかったけどな」
「お互い何を買ったかなんて……いちいち見ない」
「共同で使っていれば、たまにはこういうこともあるだろうね。僕も気をつけるようにしないといけないね」
皆で顔を合わせてクスクスと笑う。僕たちはこの場所で一緒に住んでいるのだから、仲良く過ごすに越したことはない。僕たちは性格も違うけれど、それなりにうまくやっていると思うから。
一通り話すと少し疲れてしまった。僕は息を吐いて眼鏡をかけ直し、ルイン、と声をかけた。
「どうした? ハス」
「プリン……話していたら食べたくなったのだけれど。分けてもらってもいいかな?」
「あ……ゼリーも。みっつ、ある。食べる?」
「おう! プリンは五個だからまだ余裕だ。折角だし、皆で食べるか! まだ誰も来てないし」
「賛成」
「もし来たら……その時はその時で。僕たちは困っている人を助ける。どんなに小さなことでも、事件は事件。だからね」
僕らのいる事務所。アーラエールを尋ねる人たちは決して多くはない。だけれど、ふと、人が迷い込んでくるときもある。
僕たちは困った人たちのちょっとした事を解決するために、ここにいる。それは、今みたいに日常の些細な出来事でも、警察が動くような事件でも、どちらにしても困っている人が助けを求めるのならば。
――何でも力になりましょう。
それが、アーラエールなのだから。
+++
その夜。
僕が自室でそろそろ寝ようかとベッドに横になったところで、ノック音が聞こえる。
「ハス? 起きてるか?」
「ルイン? 今開ける……」
僕が言いながら扉を開けたところで、腕を引かれて唇を奪われる。ルインはいつもこうだ。
「んっ……ちょっと、ルイン。何、いきなり」
「ハスが欲しい。なぁ、そろそろいいだろ?」
「いいだろ? って……。あのね、ルイン。いつでもいいよ、って言ったけれど。毎日いいよ? って言わなかったよね」
「だから、三日は待った。でも、もうハスに触りたいって。ハスが好きだから一緒にいるし」
ルインはストレートだ。思ったことはハッキリ言うし、すぐに行動に移す。僕が良いとも言っていないのに、部屋に入って鍵を閉めると僕のことをさっさと押し倒してしまう。
「好きになってもらえるのは嬉しいけれど、そんなに求められたら身体がもたな……」
「俺が動くし、無理はさせないって。だって俺、ハスのこと大好きだし」
本当に聞く耳を持たない。その耳は飾りなのかと問いたい。でも、ハスの髪も、耳も、尻尾も。ふわふわしているし、僕も触るのが好きだから止められない。
「ルイン……」
「ハス……ハス……」
僕の名前を呼びながら、優しい手付きで僕の寝間着のボタンを外していく。こういう時でも優しくて丁寧なところも好きだ。僕はつい絆されてしまうのがいけないのかもしれないけれど……。どうしても止められない。
「ぁ……」
「でも、今日は優しく少しだけにするし。じゃないとシャルにまた文句言われるんだよ。獣が、って」
「ふふ……でも、僕、いいよって言ってないのに。もう、服を脱がせようとしているから」
「それはまぁ、そうだけど。ダメ?」
シュンと耳と尻尾が垂れるのが分かると、やっぱりダメだとは言えなくなってしまう。ルインを腕で引き寄せて、いいよ、と囁いた。
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