3 / 4

File.0-3 今度は仲良く

僕が問うと、シャルはさらに俯いて言いづらそうにしている。ルインを見ると納得したので怒ってもいないし、そうかよ。と楽しそうに笑っているくらいだ。 「……食べたら美味しかったから。思わず全部食べた。一応謝ろうとは思ってた。ごめん」 「俺の置いたところになかったから減った! って思ったんだよな」 「逆にルインが数が少ないことに気づいたことには驚いた。奥にゼリーもあるはずなのに」 「一直線に綺麗に並べてたし。列が乱れたらすぐ分かる。俺も手前しか見てなかったから奥にゼリーがあるのは気づかなかったけどな」 「お互い何を買ったかなんて……いちいち見ない」 「共同で使っていれば、たまにはこういうこともあるだろうね。僕も気をつけるようにしないといけないね」 皆で顔を合わせてクスクスと笑う。僕たちはこの場所で一緒に住んでいるのだから、仲良く過ごすに越したことはない。僕たちは性格も違うけれど、それなりにうまくやっていると思うから。 一通り話すと少し疲れてしまった。僕は息を吐いて眼鏡をかけ直し、ルイン、と声をかけた。 「どうした? ハス」 「プリン……話していたら食べたくなったのだけれど。分けてもらってもいいかな?」 「あ……ゼリーも。みっつ、ある。食べる?」 「おう! プリンは五個だからまだ余裕だ。折角だし、皆で食べるか! まだ誰も来てないし」 「賛成」 「もし来たら……その時はその時で。僕たちは困っている人を助ける。どんなに小さなことでも、事件は事件。だからね」 僕らのいる事務所。アーラエールを尋ねる人たちは決して多くはない。だけれど、ふと、人が迷い込んでくるときもある。 僕たちは困った人たちのちょっとした事を解決するために、ここにいる。それは、今みたいに日常の些細な出来事でも、警察が動くような事件でも、どちらにしても困っている人が助けを求めるのならば。 ――何でも力になりましょう。 それが、アーラエールなのだから。 +++ その夜。 僕が自室でそろそろ寝ようかとベッドに横になったところで、ノック音が聞こえる。 「ハス? 起きてるか?」 「ルイン? 今開ける……」 僕が言いながら扉を開けたところで、腕を引かれて唇を奪われる。ルインはいつもこうだ。 「んっ……ちょっと、ルイン。何、いきなり」 「ハスが欲しい。なぁ、そろそろいいだろ?」 「いいだろ? って……。あのね、ルイン。いつでもいいよ、って言ったけれど。毎日いいよ? って言わなかったよね」 「だから、三日は待った。でも、もうハスに触りたいって。ハスが好きだから一緒にいるし」 ルインはストレートだ。思ったことはハッキリ言うし、すぐに行動に移す。僕が良いとも言っていないのに、部屋に入って鍵を閉めると僕のことをさっさと押し倒してしまう。 「好きになってもらえるのは嬉しいけれど、そんなに求められたら身体がもたな……」 「俺が動くし、無理はさせないって。だって俺、ハスのこと大好きだし」 本当に聞く耳を持たない。その耳は飾りなのかと問いたい。でも、ハスの髪も、耳も、尻尾も。ふわふわしているし、僕も触るのが好きだから止められない。 「ルイン……」 「ハス……ハス……」 僕の名前を呼びながら、優しい手付きで僕の寝間着のボタンを外していく。こういう時でも優しくて丁寧なところも好きだ。僕はつい絆されてしまうのがいけないのかもしれないけれど……。どうしても止められない。 「ぁ……」 「でも、今日は優しく少しだけにするし。じゃないとシャルにまた文句言われるんだよ。獣が、って」 「ふふ……でも、僕、いいよって言ってないのに。もう、服を脱がせようとしているから」 「それはまぁ、そうだけど。ダメ?」 シュンと耳と尻尾が垂れるのが分かると、やっぱりダメだとは言えなくなってしまう。ルインを腕で引き寄せて、いいよ、と囁いた。

ともだちにシェアしよう!