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「……なんか……ヤル気失せちまった。風呂行って来いよ」
「えっ!?」
予想外の言葉に理人が目を見開くと、蓮は呆れた様子でため息をついた。
「なに驚いているんだ。……それとも、まだヤり足りなかったのか?」
「なっ!? そんなんじゃない! 俺はただ……っ」
「はいはい。わかったから。さっさとシャワー浴びてこい。そんな状態じゃ家に帰れないだろ?」
「うっ……」
確かに今の自分は酷い有様だった。下半身は丸出しで、身体中に情事の痕が残っている。蓮の言うとうり流石に精液まみれの身体では戻れるわけがない。
「ほら、早くしろよ。それとも手伝ってやろうか?」
「手伝いなんていらねぇよ!! バカッ!」
蓮の言葉にカァッと頬が熱くなるのを感じた。これ以上付き合ってられないと思い、理人はそのまま浴室へと駆け込んだ。
◆
壁に手をついたまま、シャワーのコックを捻る。頭上から降って来た冷たい水はすぐに温かい湯に変わっていった。
「……はぁ」
大きな溜息を一つ吐き出すと、その場にずるずると座り込む。結局、今日も中に出されてしまった。しかも、達する瞬間、あんなに嫌だった筈なのに体内に熱い奔流が注ぎ込まれる感覚に堪らなく身体が甘く疼いて、自分も大量に射精してしまったのだ。戒めを解かれた瞬間の快感は凄まじく、頭が真っ白になるほどだった。
「チッ」
思い出しただけで身体の奥がヒクリと震えた。そのはずみに、まだ残っていた蓮の残滓がどろりと太腿に流れ落ちる。
「く……――ッ」
その感覚にさえ身体は反応してしまい、慌てて唇を噛み締めて耐えた。
(……くそっ)
こんなの絶対におかしい。身体を繋げる度にどんどん淫らになっていく自分の身体に恐怖を覚える。これじゃまるで本当に蓮に抱かれるために身体を明け渡したみたいじゃないか。
「違う……っ、俺はそんなつもりじゃ……っ」
自分に言い聞かせるように呟いたけれど、それはどこか空虚な響きを帯びていて、余計惨めになっただけだった。
お湯とは違う粘ついた粘液を見たくなくて、ボディーソープを遮二無二擦り付ける。恐る恐る後ろに手を伸ばし指を挿入するとくちゅりと卑猥な音が響き、太腿に白濁が流れ落ちた。
「……っ、う……っ」
中に残る蓮のモノを掻き出すと、後孔からトロトロと白濁が零れてくる。それを見ているうちにだんだんおかしな気分になって来て、必死に首を振って誤魔化した。
「ふ……っ、く……っ」
もうやめようと思うのに、一度火が点いた欲望はなかなか消えてくれず、自然と手が下肢に伸びて、気が付けば自慰に耽ってしまっていた。
「はぁ……っ、はぁ……っ」
シャワーの音に混じって聞こえる荒い呼吸音。その主は他でもない自分だ。頭から湯を被りながら、壁に凭れ股を大きく開いて自らの陰茎を扱き上げる。先端からは先走りがダラダラ流れ出し、ぐちゃぐちゃと激しい音を響かせていた。
「はぁ……っ、んんっ、あっ」
『気持ち良い?』
不意に耳元で囁かれた声が蘇り、ビクンッと腰が大きく跳ねる。気持ちがいい。だけど、物足りない。もっと欲しいのはそこじゃない。
いつものように後ろから貫かれたい。あの男の長い楔で奥まで穿たれて、何も考えられなくなるくらい滅茶苦茶にしてもらいたい。そんな欲望が頭を擡げもどかしさに体内がヒクつき腰が揺れる。
自分は一体何をしているのだろう。嫌いだったはずの男の家で犯され、散々啼かされた挙句に、風呂場でこんなことするだなんて。正気の沙汰とは思えない。
頭ではわかっている筈なのに、どうしても我慢が利かない。
「――はぁ……落ち着けよ、俺……」
火照った身体を鎮める為に水へと切り替える。しかし、冷水をいくら浴びても熱は中々引いてくれず一向に治まる気配はなかった。
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