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「シャーッ!」 「あ、コラ……ッ!」  慌てて止めに入る秀一を尻目に、理人はムッとした顔で猫を睨み付ける。 「チッ、生意気な……」 「ボス、ダメだってば。そうやってすぐ威嚇する……」  秀一は困ったように呟いて、理人とボスの間に立ち塞がった。  ボスと呼ばれた猫はまだ唸っていたが、暫くすると落ち着いたのか秀一の腿に飛び乗った。 「ごめんね、お兄さん。この子ちょっと目付きが悪いけど人見知りで。でも本当は、すごく優しい子なんだ」 「……随分と懐いてるみたいだな」  膝の上でゴロゴロと喉を鳴らし気持ちよさそうに撫でられていたが、理人をぎろりと睨むとフンと鼻を鳴らし徐に秀一のTシャツをくぐって中に潜り込む。 「わっ、ちょっと、なに!? くすぐったいよボスっ! やっ、何処舐めてんだよ! あはは、くすぐったいってば」  この猫、とんでもないエロ猫じゃねぇか! いたいけな小学生に何やってんだクソが。  何だか妙に腹が立って、服の中から引きずり出すと首根っこを捕まえて目の前にぶら下げた。 「おい、何やってんだエロ猫がっ!」 「ミャァッ! フギャーッ!!」  耳をつんざくような悲痛な鳴き声を上げてジタバタ暴れ、手を離すと不服そうな顔をして一目散に去って行った。 「たく……。俺があのエロ猫と似てるって?」 「うん、なんか雰囲気とか目とかそっくりだなって」 「……どこがだよ。めちゃめちゃ喧嘩売って来たじゃねぇか」  少なくとも自分は、自分から喧嘩を売るような真似はしない。売られた喧嘩はもちろん買うが。 「あの子、僕の唯一の友達なんだ。だから、嫌わないで?」 「……」  そんな捨てられた仔犬みたいな目で見るな。反則だ。  理人は溜息をつくと、仕方がないといった様子で秀一の頭を軽くポンと叩いた。 「でも、今日お兄さんと会えて良かった。……夏休みの間、ずっと独りだったから」  寂しげに微笑んで、ぽつりと呟く。 「そうか……」  この子は同じ年代の子供がプールでワイワイ楽しそうに遊んでいる時に、ずっとここで猫と過ごしていたのだろうか?  そう思うと、なんだか胸が締め付けられる思いがした。だからつい、言ってしまった。 「今度の日曜、暇だからどっか連れて行ってやろうか?」 「えッ!? 本当に? いいの?」  ぱぁっと花が咲くように笑う。その笑顔を見て、あぁ、やっぱりコイツには笑っている方が断然良いなと思った。  人様の家の子を勝手に遊びに連れて行ってもいいものだろうか? そんな事も頭を過ったが、話を聞いている限りほぼネグレスト状態の親だ。ほんの数時間位は構わないだろう。 「で、何処に行きたいんだ?」 「んーっとね……動物園!」  物凄く嬉しそうな声がそう告げる。 「……動物、園?」  思わずたっぷり5秒ほど間が開いてしまった。途端に秀一の顔が不安げに曇る。 「ダメ……かな?」  あぁ、そんな顔すんじゃない。別に行けないわけじゃないから。ただ、予想外だっただけだ。 「朝8時に、この公園に集合な。遅れたら連れて行かねぇぞ。あー、あと……お前の姉さん位にはちゃんと言っておけよ」 「うん!」  小さなため息を零しつつ、時間と待ち合わせ場所を伝える。動物園なんて小学校の遠足以来行ったことは無いが、華のような笑顔で頷かれたら、断ることなんて出来なかった。

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