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一体どうしてこうなったんだろう?  建物の同士の裏手に引き摺り込まれ、跪いて口で奉仕することを強要された。  跪けと命じられた時には意味を理解するのに数秒を要し、ようやく意味を理解した時にはパニックに陥りそうになった。  身を捩って逃れようとしたが力ずくで地面に膝をつかされる。自分だって運動部で鍛えていて力はそこまで弱くない筈なのに、蓮の力は細身の体に似合わない位強く、理人が抵抗しても全くと言っていいほど動じない。 「ほら、早くしろよ」  頭上から苛立たしげな声が聞こえてきて思わずチッと舌打ちが洩れた。  こんな所で行為を強要してくるこの男が憎くて、悔しくて、惨めで。恥ずかしいやら情けないやらで色々な感情が綯交ぜになっていく。 「……チッ、変態野郎が」 「は? 何か言ったか?」 「……なんでもねぇよ」  悪態を吐き唇を噛みながら、ズボンのチャックを下ろした。まだ萎えているソレを取り出し躊躇いがちに口に含んだ。  舌先で形をなぞり、吸い上げながら徐々に硬度を増していくモノを喉の奥まで迎え入れる。 「ふ……っ……ん……」  吐息と共に溢れる唾液が顎を伝って滴り落ち、コンクリートに染みを作っていく。  こんな事したくないのに、屈辱的で仕方がないはずなのに、何故か身体が熱く疼いてしまう。 「は……んぅ……っ……ふ……んん……」  茎の根元を持って支え、唇を窄めて深く飲み込む。届かない所は手で扱くと口の中でさらに一回り大きくなった。  蓮の手が不意に理人の髪に触れた。意地悪でとんでもない事を強制しているくせに髪を梳く手は何故か優しくて、それがまた理人の心をかき乱す。  口に入りきらなくなり、扱きながらアイスを舐めるみたいに下から上に舐め上げると、蓮がクッと息を詰めるのがわかった。  咥えながら目線を上げると、情欲に濡れた蓮の瞳がジッとこちらを見下ろしていた。 「はは、やっぱお前エロいわ。すげぇそそられる」 「……ッ!」  羞恥心から慌てて目を逸らすと、蓮は愉快そうに笑い声を上げた。  早く終わらせてしまいたくて、先端から体液を滲ませ始めたソレを吸い上げ喉の奥まで呑み込んで必死に奉仕を続ける。  熱い……、こんなに熱くて硬いモノがいつも自分の中に入っているのか……。  ぐちゅぐちゅという卑猥な水音が耳を犯し、夢中でしゃぶっているうちにいつしか思考は蓮との淫らな行為に変換し、自分が犯される空想を描き始めた。  此処は動物園だ。すぐそこの通路には小さな子供を連れた大人たちが沢山いる。時折聞こえてくる子供たちの楽し気な笑い声や、動物たちの鳴き声が何処からともなく聞こえてくるたびに、いけないことをしているのだという背徳感が余計に興奮を煽った。  そんな場所で自分は何をしてるんだろう。見付かったら大変な事になるのは目に見えている。  自分を地面に押さえつけていた手は、今は自分の頭の上で、優しく髪を梳いたり時折息を詰めて強く握ったりしているものの、別に縛り付けられているわけでは無い。  今なら嫌だと言って逃げ出すことはいくらでも出来るはずなのに、何故かそれが出来なかった。  もう、やめなければ。頭の片隅ではそう思っているのに口内の蓮自身が愛おしくて堪らない。  もっと欲しい。気持ちよくなりたい。蓮にも自分の口で感じて欲しい。  そんな欲求が次から次に湧いてきて、理性がどんどん崩れて行く。 「あー、そろそろヤバい。出すから全部飲めよ」  熱を帯びた声に触発され、ごくりと息を呑んだ。 淫乱と呼ばれても仕方がないのかもしれない。 だって今この状況にこんなに感じてしまっている。 早く、早く欲しい。 喉の奥に、熱い飛沫を……。 理人は蓮の腰に手を回すとぎゅっと抱きつくようにしながら激しく頭を上下させた。 「くっ……は、やば……」  蓮が切なげに喘いだ直後、口内に生温かい液体が勢い良く放たれ、理人はビクビクと身体を震わせながらそれを飲み込んだ。  全て出し終えても、名残惜しむかのように何度か扱いて最後の一滴まで搾り取ると、漸く口を離した。 「はは、すげーな。全部飲んだのかよ。やらしー」 「……うるせぇ」  唾液で濡れた顎を手の甲で拭うと、蓮に背を向ける。 「もう気が済んだだろ? 多分、ケンジが探してるから行かないと。げっ、着信あってたの気付かなかった」  携帯を確認すれば、ケンジからの着信が数件入っていた。トイレから戻って理人がいないのできっと心配しているに違いない。

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