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「チッ、またケンジ……かよ」  忌々し気に呟いた蓮の言葉は後ろを向いている理人には聞き取れなかった。  携帯を耳に押し当て通話ボタンを押しながら、蓮を手でシッシッと追い払うような仕草をする。 『リヒト君!? 良かったぁ~! 今どこ!?』  ワンコールで電話に出たケンジは、耳がキーンとなりそうな勢いで電話口で捲し立てた。 「悪い、ちょっと外人さんに声かけられて道案内を――ッ」  その時、背後で気配がした。腰のあたりに手が乗せられる。脇から前へと這わされて、理人の身体は凍り付いた。 「おいっ、何して……っ」 「ケンジに悟られんなよ」  耳元で囁かれる声が熱い。ゾクリとしながら、理人は携帯を握りしめる手に力を込める。 『そうだったんだね。やっぱりリヒト君って優しいなぁ。で、今どこに居るの? 場所わかる?』 「い、いま……ぇえっと……」  シャツの中に潜り込んだ手が、ズボンのゴムを押し上げて中に滑り込んでくる。咄嗟に掴もうとしたが、蓮が片方の手で胸の飾りをギュッと摘まむ方が早かった。 「っ、ぅ……っ」 『リヒト君?』 「な、なんでも、ないっ」  下着の上からなぞる様に長い指が這いまわり、摘ままれた箇所をもう片方の手が優しく捏ねまわす。くりくりと指で甘い刺激を与えられて堪らず唇を噛んだ。  耳元で、蓮が微かに笑う。その残酷な声に理人は真っ赤になりながら、キッと後ろを睨み付けた。 『どうかしたの?』 「ほんと、何でもない、からっ! えっと、ケンジは今どこにいるんだ?」  理人は理性を総動員して必死に平静を装うとする。ケンジにだけは今どんな状態になっているのか知られたくない。なのに蓮は容赦なく、いやらしい手つきで理人の身体を弄り続けていく。  つい先ほどまでの行為で昂っていた身体は蓮の手によって簡単に火が灯り、下半身がズクンと重くなる。 「はっ、ぁ……っ……ふ、んっ……」  通話口を手で押さえ、洩れそうになる声を必死に堪える。 『えっと……僕は今、夜の動物コーナーまで来てるんだ。戦隊ショーがあってた所のすぐ近くまで戻って来たんだけど』 「そ、そうか……」  指で突起を揉み込むように捏ね回され、爪の先で軽く搔かれた。股間を弄る手は、下着の縁をなぞり、中に潜り込んできそうな気配すらある。  まさかこんな所でと、思ったが強引に口淫をさせるような奴だ。やりかねない。 「じ、じゃぁ今からそこに行くからっ! 少し待っててくれっ」  これ以上、声を堪えるのも限界で、早口で一気に捲し立てると、ケンジの返事も聞かずに電話を切った。 「なんだ、もう切っちゃったのか……」 「てめっ! ふざけんなよ!? 何しやがるっ」  睨み付けても効果は薄い。蓮の手の動きが止まる事はなく、それどころかさらに大胆になっていく。  ズボンの中に侵入した手は、既に硬く張り詰めたものを包み込み、形を確かめるように根元から先端に向かってゆっくりと撫で上げる。 「はっ……んっ……くぅっ……や、やめっ」 「あー……どうしよっかな。ま、いっか止めてやるよ」 「ふ、ぇっ!?」  突然、パッと手を離された。散々高められた熱が行き場を失い、身体の奥で暴れ回る。  どうして? と思わず振り向くと、蓮はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて理人の顔を覗き込んできた。 「やめて欲しかったんだろ? 早くしないとケンジ待ってるしねぇ」 「……っ」 「さ、行こっか」  あっさりと解放されてしまった。中途半端に与えられた熱をどうにかしたいのに、蓮はそれを許そうとしない。  しかも、何故かついてくる気満々で、早くしろとばかりに背中を押されて下肢に欲求不満を覚えつつ仕方なく歩き出すしかなかった。

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