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その後、再会したケンジは蓮を見て驚きはしたものの、たいして取り乱すことも無なく、理人を驚かせた。
寧ろ、適当な嘘を並べて自分たちと同行したいと言った蓮を断るどころか、少し困った表情をしながらも受け入れる器の大きさに逆に理人が戸惑ってしまう程だ。
コイツはもしかして人を疑うという事を知らないのだろうか?
自分だったら散々虐げられてきた相手なんかと会いたくないし、万が一で会ってしまったらこんな風に平常心ではいられない。
ケンジは蓮の事が憎くないのだろうか? あんな無体を強いられていたはずなのに普通に接することが出来るものなのか?
自分にはわからない。 もしかして、それとも、まだ蓮に逆らえない理由が何かあるのだろうか? なんて邪推してしまう。
流石に、コイツの腹黒さに気付いていないわけは無いだろう。だったら何故?
夜の動物コーナーを歩きながら、自分の腕に寄り添って少しの物音にもビクビクと小さく身体を震わせしがみ付いてくるケンジを横目で見ながら、理人はそんな事をぼんやりと考えていた。
森の中を模した造りは中々に本格的に作りこまれていて、3人で夜の森に迷い込んだような錯覚に陥りそうだった。
ガラスを隔てた向こう側では、木の幹に沿った大きな蛇が赤い舌をチロチロと見せながらジッとこちらの様子を伺っている。
森の奥深くまでやって来た時、突然蝙蝠たちが一斉に羽ばたき、バサバサと音をたてて飛び立った。
「……っ」
すぐ目の前を横切ったかのような迫力に圧倒され、ついビクっとして蓮の腕に掴まってしまった。
慌てて、離れようとするが、隣にケンジが居るために身動きが取り辛い。
「おいっ、離せっ!」
「嫌だ。お前がくっついて来たんだろう?」
「……っ」
確かにそうだが、だからといって素直に認めてしまえば余計に調子に乗らせてしまう。
理人はムッとしたまま黙り込んだ。
「ふふ、二人とも仲がいいんだね」
「はぁ!? 何処がだよ!?」
ケンジが見当違いな事を言ってクスリと笑う。
それには蓮も不服だったようで、ムッとした様子で手を離した。
「ケンジ。俺と理人が仲良く見えんのお前だけだろ」
「マジ同感! 意味わかんねぇし。こんな性悪と仲いいとか、いっぺん眼科行った方がいいぞ」
鼻で笑ってやったら、蓮が思い切り眉をしかめた。
「ははっ、そう言うとこ。息ぴったりじゃない?」
「「全然違う!!」」
「ほらね」
理人と蓮の声がハモると、ケンジは楽しそうに笑った。
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