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「……」 「おい、いつまで拗ねてるつもりだ?」 「うるさい」  あれから結局もう一回交わって、その後風呂場でもう一回と休憩時間ギリギリまで散々抱き潰された結果、理人の機嫌は最悪だった。 「お前が悪いんだろ? あんな可愛い声で強請られたら誰だって止まれるわけないだろ」 「可愛くなんて無いし、強請った記憶なんてねぇよ馬鹿!」 「ほぉ? 我慢できないからぶち込んで欲しいとか、もっと~って甘えた声で強請ってたくせに」 「……っ」 「お前のそういう素直じゃない所がたまんねぇんだよな」 「……っ変態! 死んじまえ!」 「はいはい」  言い合いながらホテルを出ると、土砂降りだった雨はすっかり止んで、雲一つない夜空が広がっていた。 「……じゃぁ俺、こっち」 「おう、じゃぁまたな」 「……」  別れ際になって急に黙り込んだ理人に蓮は首を傾げる。 「なんだ、寂しいのか?」 「そんな訳あるか! さっさと帰れ!!」 「はいはい」  クスリと笑みを漏らして、蓮は踵を返した。  理人の機嫌は最悪だが、蓮の方は超絶機嫌がいいらしい。鼻歌でも歌い出しそうな勢いでで去っていく背中を理人が見つめているとも知らずに  ――。 「……」  理人の表情に僅かな影が落ちたが、その事に蓮は気付かなかった。  蓮の姿が見えなくなるまで理人はその場に立ち尽くしていたが、やがてその姿が完全に見えなくなった所で踵を返し歩き出した。  今日は、秀一も一緒じゃなくて良かった。 あんな場面、純粋な彼にはとてもじゃないが見せられない。  こんなはずじゃなかったのに、どうしてこうなった。 「くそっ」  理人は小さく悪態をつくと、夜の闇に消えていった。

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