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act:6 取引
それから一週間、再び連からの連絡はぱったりと途絶えてしまった。
またあの場所で、アルバイトに勤しんでいるのだろうか? それとももう、飽きてしまった?
机の脇に置いた鳴らない携帯を睨み付け、理人は深い溜息を零す。
自分は一体、何を考えているんだ。連絡が来なくなって良かったじゃないか。
これでようやく解放されて、またいつも通りの日常に戻る事が出来る筈なのに、何故こんなにも気になるのだろう。
あんな事、されて嫌だったはずだ。淫具を体内に収めたまま試合をさせられたり、AV女優のように拘束されて散々嬲られたり、ドア一つ挟んだ向こう側に人がいるのに声を抑えられず、聞かれてしまうかもしれないという恐怖に怯えながらも何度も極めさせられて……。
思い出しただけで顔が熱くなる。怒りなのか羞恥心なのか自分でもよくわからない感情に翻弄されて、理人の胸中は穏やかではない。
強引に受け入れさせられた色々な凌辱行為が脳裏に浮かび忸怩たる思いが募る。
「あんな事、嫌なのに……。なのに、俺はどうして……っ」
蓮の事が頭から離れない。
――本当はこうやって、苛められんの大好きなくせに。
「違う……ッ」
――さっきからキュウキュウ締め付けて来てんぞ。よっぽど好きみたいだな、コレが。
「違う……っ」
違う。そんなはずはない。そんな事あるわけがない!
心で否定してみても、内に潜む何かが、淫らな妄想に火を灯す。
あの日を、蓮の切羽詰まったような欲望に満ちた表情を思い出すたびに、どうしても身体の奥底が疼いて堪らないのだ。
身体が覚え込まされてしまった快感を思い出して、じわりと下腹部が熱を帯びる。
「っ……くそ……っ」
忌々しげに呟きながら、理人はハーフパンツをずらし下着の中に手を差し込んだ。そこは既に緩く勃ち上がりかけていて、先端からは透明な先走りが滲んで軽く扱いただけでぬるりと滑る。
指先で鈴口を撫でると、ビクリと腰が跳ねた。
ゆっくりと上下に扱き始めると、すぐに硬度を増して天を向いていった。
――どうして欲しいか言ってみろよ。ここが気持ち良いんだろ?
耳元に囁かれる蓮の声が蘇る。
「っ、は……ぅ、んんっ」
自分は今、勉強をしていた筈だ。なのに、何をしているのだろう。
こんなの、おかしい。そう思う理性とは裏腹に、身体は貪欲に快楽を求め始めていて、気が付けばペンを置き椅子に深く腰掛けて胸元を自分でコリコリと弄っていた。
カリッと爪を立てて引っ掻けば、甘い刺激に身体が震えて鼻から抜けるような声が出そうになり慌てて唇を噛んで洩れそうになる声を必死に堪える。
「ん……っ、ふ……っ、ンッ」
芯を持った乳首が硬く尖っていく。摘まんでは引っ張り、捻り上げる度に身体中に電流が流れるような感覚に襲われた。
もう片方の手は忙しなく股間を刺激し続けている。
「ぁ……っ、あ……っく……」
少しでも声が漏れないようにシャツを噛んで堪え、それでも零れ落ちる吐息が静かな室内に響いた。時折聞こえてくる近所の幼い子供たちの笑い声が、昼間からイケナイ事をしていると言う背徳感を煽っていく。
「は……っ、はぁっ……っ」
いつの間にかペニスは完全に反り返り、痛いくらいに張り詰めていた。
このまま達してしまいたい。早くこの熱を解放してしまいたい。
そんな衝動に駆られ、自然と手が動く速度を上げていく。しかし、あと少しの刺激が足りなくてどうしても達することが叶わない。
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