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「ん……っ」
ひやりとした無機質な質感に身震いし、ゆっくりと体内に沈めていく。
「ふ……っ、ん……っ」
先端が入ってしまえば後は楽で、一番大きいサイズだというのに難なく飲み込んでしまう。
「あ……っ、あ……っ」
ゆっくりと抜き差しを繰り返す。
中のイイトコロを掠めるたびにビクビクと腰が跳ねて、機械の不規則な動きに翻弄され口の端からは抑えきれない喘ぎが零れた。
「あっ、あ……っ、やべ、コレ……クる」
今まで感じたことの無い感覚が襲ってきて、理人は戸惑った。
怖いのに止められなくて、気が付けば両手でバイブを掴み無我夢中で動かしていた。
「あ……っ、あぁ……っ、なん、だ……これぇ……っ、すご、あぁ……っ」
気持ちいい。凄まじい快感に意識が飛びそうになる。
ガクンガクンと腰が揺れて、ペニスの先端からはだらし無く先走りが溢れた。
「んんっ、く……っ、あぁ……っ」
絶頂が近い事を感じ取り、ラストスパートをかけるようにバイブを掴んで激しくピストンさせる。
「はぁ……っ、ぁあっ出る……っ」
身体の奥からせり上がって来るような射精感に、ギュッと目を瞑り歯を食い縛る。
「ああぁっ! やべ、イク……っ、んんーっ!!」
びくんっと大きく身体を仰け反らせ、勢い良く手の中に白濁を吐き出した。
「ん……っ、く……っ」
何度かに分けて放出した精液が、どろりと掌を汚す。
「はぁ……っ、はぁ……っ」
余韻に浸りながら、荒くなった呼吸を整えるべく深々と息を吸い込んだ。
「――はぁ、……馬鹿だ、俺は……」
盛大な溜息と共に呟き、体内を苛んでいるものを引き抜くと、理人は汚れた手をタオルで拭き取った。
後には、激しい後悔と虚しさだけが残った。
◆
結局、蓮からの連絡は途絶えたままで、気が付けば2学期が目前に迫りテスト期間を迎えようとしていた。
部活で山田と顔を合わせる事はあるものの、元々そこまで親しい間柄という訳でもない為、会話らしい会話はしていない。
アイツは今、何処で何をしていて、何を考えて居るのだろう?
気にしてやる必要なんて何処にもないはずなのに、ふとした瞬間に蓮の事を考えてしまう。
「……くだらねぇ」
吐き捨てるようにそう呟いて、ペンを置くと椅子に深く座りなおし盛大な溜息を吐いた。
あの日以降、玩具を使用して自慰をすることが格段に増えた。だが、所詮玩具だ。身体の方はある程度満足しても、心までは満たされない。
強烈な快感のあとには必ずと言っていいほど酷い自己嫌悪に陥るのだ。
それでも、やめられそうになかった。
蓮によって作り替えられてしまった身体は、もう以前のようには戻れない。
「はぁ……」
また一つ、深い溜息を吐いたその時、不意に机の上に置いていた携帯電話が震えた。
誰からだろうと画面を開くとそこには「ケンジ」の文字が刻まれている。
一体こんな時間に何の用だろうか?
疑問に思いつつ通話ボタンを押すと、いつも通りの明るい声が聞こえてきた。
『あ、もしもし。リヒト君? ごめんね、今何してた?』
相変わらずふわんとした空気が漂う男だ。その柔らかな雰囲気は嫌いじゃない。
「いや、勉強してたけど……。別に構わない。それより、どうした?」
『うん、ちょっと相談があってさ。リヒト君の都合が良い時で良いんだけど、会えないかな?』
「―――電話じゃだめなのか?」
『なんて言うか、直接会って話したいなぁって』
「……」
電話で話せない重要な話って一体なんなんだ。まさかとは思うが、この間の件で何か言われるんじゃないだろうか? 二人でラブホに入ったのがバレた? そんな不安が頭を過り、少し迷った後「わかった」とだけ返事をして電話を切った。
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