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9-4(瀬名視点)

(瀬名視点)  太陽が眩しい。  明日になったら理人とのデートが待っている。そう思ったら楽しみすぎてどうしても顔がにやけてしまう。 「今日は一段とご機嫌だね。瀬名君。何かいい事でもあった?」  隣の席の萩原がさっそくつついてくる。 「わかります? 明日、理人さんと一緒に出掛けるんです」  浮かれすぎて黙っていられない。つい嬉しくなって口を開くと、萩原は「あ~、なるほど」と納得した様子で苦笑いを浮かべた。 「デートですか。鬼塚部長ってどんな所でデートするんだろう? 全然想像つかないな」 「実は、動物園に行くんです」 「えっ?」  ピシッと萩原が固まったのがわかった。 あれ? 何かおかしな事言っただろうか? 「もしかして、猛獣と戯れるとか?」 「違いますよ。普通の動物園です」 「……ぜんっぜん、想像付かない!!!」 「そんなに驚くことかなぁ?」 「だって、あの鬼塚部長だよ?  動物園なんて似合わないにも程があるでしょ!」  そう言うと、萩原は大げさに肩をすくめた。 「う……っ、やっぱりそう、かなぁ? 動物園に行きたいって言ったらものすっごく困った顔されたんだよね……」  理人の反応を思い出して、瀬名はガックリと項垂れた。 「はぁ~……鬼塚部長と動物園……ほんっと瀬名君って愛されてるんだねぇ」 「そ、そう?」 「だって、あの鬼塚部長だよ? 瀬名君以外の人が言っても絶対断られるって」  そう言われると何だか照れくさくなって、瀬名は頬が緩むのを感じた。 「おい! 無駄話してる暇があったら、ちゃっちゃと手を動かせ! 萩原は随分と余裕みたいだから、これを100部コピー頼む」  聞こえてるんだよっ!と、ぼやきながら理人が会話に割って入って来て、二人の間にバン、と書類の束を置いた。 「うげぇ、100部って……相変わらず、容赦ないなぁ」  理人によって無慈悲に渡された紙の山を見て、萩原がげんなりとする。 「瀬名もだ。あんま浮かれてるんじゃねぇぞ。……定時で終わらなかったらおいて帰るからな!」  ギロリと睨まれ、思わず背筋が伸びた。本当にONとOFFの差が激しい。家ではあんなに可愛いのに……。昨夜だってあんなに乱れて――。  そんな事を考えていると、思考を読んだかのタイミングで理人に思いっきり脛を蹴られた。  痛っ! と、思わず声を上げると、理人はふんっと鼻を鳴らして去って行く。  理人さんってば、ホント鋭いんだから。  瀬名は、思わずクスッと笑みを漏らしデスクへと向き直った。

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