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そんな会話を耳に挟みつつ、ビールを煽っていると突然入り口の方が俄かに騒がしくなってきた。  何事だろうかと視線だけ向けると、すっかり出来上がった数人の男たちが、背の高い男性の腕を引いて此方へ向かってくるところだった。  見覚えのあるスーツを身に纏っているが、髪型も雰囲気も違うせいか、別人のように見えて戸惑う。 「はいはーい! みなさーん。スペシャルゲスト、御堂生徒会長様の登場だよ~!」 「お、おいっ僕は別に……」  男の声に皆の視線が一斉にそちらへと向けられる。 「あらやだ、なんでこんな所に居るの?」 「……蓮……」  その名を呟き、理人は驚きの余り持っていたグラスを落としそうになった。  まさか、蓮が同窓会に来るなんて夢にも思わなかったからだ。  酔っぱらった友人曰く、トイレを済ませて戻る途中、一足先にお開きになった披露宴会場から偶然出てきた蓮とばったり出くわしたのだと言う。  どうせなら、一緒に飲もうと言う話に(一方的に)なり此処に拉致って来たらしい。  酔っぱらいに絡まれるとは蓮もツイていない奴だ。  先日会った時にも思った事だが、蓮は以前より随分と端整な印象を受ける。  元々整った顔をしていたが、今は精巧な人形のような美しさがある。スラリと伸びた手足は長く、溢れる色香が全く抑えられていない。  現に、既婚者であるはずの女性たちの目が色めき立っている。  瀬名といい、コイツらといい、自分の周りの男はどうしてこうも美形が多いのだろう。  まぁ、今更自分には関係のない事だ。蓮との関係なんてとうの昔に終わっているし、きっと彼も既婚者であるに違いない。  そんな事よりも、早く戻って瀬名との関係修復について考えたい。  今更都合が良すぎるとは思うが、このままで良いはずがないのだから。 「えーっ、会長ってまだ独身だったんですか? 意外……」 「ハハッ、よく言われるよ。ずっとスーツアクターの仕事が忙しくって、暇が無かったから」 「スーツアクターって、戦隊ものの? えーっすごーい! 子供と一緒に毎週見てたけど、知らなかった!」  流石イケメンには女性たちの食いつきが違う。元々彼が合流した時から彼女たちは蓮にいい顔を見せていたが、TVに出ている有名人だとわかった途端に目がハートマークになった。  女に興味がないせいか、理人は女の媚びを冷静に見抜くことが出来る。既婚者であることを忘れて、猫撫で声を出しながら蓮に擦り寄って行く女性陣の浅ましさには辟易する。 「でももう、先日引退してね。今はほとんど地方のショーにしか出ていないんだ。撮影中に腰をやっちゃってさ……もう、いい年齢だし好きな事やり切ったから裏方でもいいかなと思って。それに僕……、ずっと忘れられない人が居るから……結婚はしない、かな」  チラリとほんの一瞬だが蓮と目が合ったような気がして、理人は飲みかけのハイボールを噴き出しそうになった。  忘れようとしても脳裏に焼き付いて離れない、あの時の彼の表情が鮮明に蘇る。  瀬名に対して罪悪感が沸くのと同時に、胸の奥がざわつく。  そんな理人の気持ちなど露知らず、女たちは黄色い悲鳴を上げた。 「えーっ、蓮君にずっと思われてる人ってどんな人?」 「うーん……そう、だな……。意地っ張りで、頑固で、不器用で、鈍くて、泣き虫だけど……凄く可愛い人、かな」 「ねぇ、蓮が言ってるのって、もしかして……アンタの事じゃない?」 「はぁ!? 馬鹿言うな。んなわけ無いだろ?」  ツンと肘で突かれて、思わず呆れた声を上げる。そんな事あるはずがない。 だって、自分達の間にあったのは身体の関係だけで、恋愛感情なんて存在しなかったはず、なんだから……。

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