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それと同時に、もしかしたら…………。と、心のどこかで期待してしまっていた自分に気が付いて体温が一気に上昇してくる。
(べ、別に車内でシて欲しかったとか、そんなんじゃねぇからな! 断じて!)
自分にそう言い訳をして、規則的な寝息を立てている瀬名をそっと覗き見た。
やはりいつみても、整った顔立ちをしている。濃く長い睫毛がくっきりと影を落としている。薄く開いた唇、自分の肩にかかるサラサラの髪。
やっぱり……、
「……好き、だな……」
思わず小さく口に出したら胸がきゅうっと締め付けられた。
バスは静かに山道を走り続け、窓の外には未だ溶け切れていない雪の名残が残った木々の美しい景色が広がっている。
目的地までまだ少しかかりそうだ。
すっかり弛緩して重くなった瀬名の体重を肩に感じながら、仄かにシャンプーの香りが残る黒髪にそっとキスをした。
*****
「――さん、――人さん」
耳元で誰かが呼ぶ声がする。とても心地よくて安心する声。
「理人さん、着きましたよ」
今度ははっきりそう聞こえて、理人はハッと目を開いた。
「悪い、知らないうちに眠っていたみたいだ……」
一体いつの間に眠ってしまったんだろう。瀬名の寝顔を眺めてひっそりと幸せに浸っていた筈だったのに。
「いえ、僕得だったんで大丈夫ですよ」
「僕得って……」
「理人さんの寝顔、凄く可愛くてうっかり襲っちゃうところでした」
「……よし、わかった。もう二度と居眠りしないように気を付ける」
さらっと物騒なことを言い出す瀬名の言葉に、理人は眉間に深い溝を作って即答した。
「えー、冗談ですよ。冗談。やだなぁ、本気にしないでくださいよ」
「テメェが言うと、冗談に聞こえないんだよっ!」
「まぁ、理人さんが襲って欲しいって言うならいくらでもシてあげますけど?」
好きでしょう? 声の出せないシチュエーション。
なんて耳元で囁かれて、先ほどの妄想を思い出し首からジワジワと熱くなるのがわかった。
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