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普段は絶対に言わないくせに、理人は何がトリガーになるのかわからないが急に大胆になる時がある。
スイッチの入った理人の誘惑に抗えるはずなんて無い。瀬名は抵抗を諦め、素直に与えられる快楽に身を委ねる事にした。
「はぁ……理人さん……っ」
「ん、んん……っ」
じゅぷじゅぷと室内に響く卑猥な水音が鼓膜を震わせる。
理人の舌使いは巧みで、まるで別の生き物のように絡みついてくる。
先端を尖らせた舌でぐりっと刺激されると、瀬名は堪らず熱い息を吐き出した。
「んっ、ふ、……んんっ、理人さん、そこばっかりじゃなく、もっと全体を舐めて下さい」
「はぁ……んっうっせ、指図すんな」
瀬名が言うと理人はブツブツ文句を言いつつ、言われた通り全体に舌を這わせ、根元を手で擦り上げながら夢中で奉仕を続ける。
時折、恍惚とした表情で咥えたまま見上げられ、吸い上げられると強い快感に堪らずごくりと喉がなった。その光景はとても淫靡で、視覚的にも瀬名を追い詰めていく。
「……ふ、でけぇなやっぱ……」
「はぁ……っ、ほんと舐めるの好きですね」
「ん、瀬名の、だからな……」
わざと煽るような音を立てながらそんな事を言われたら、瀬名は理性が飛んでしまいそうになる。
「っ、おい、いきなりでっかくするんじゃねぇっ」
勢いを増して更に硬度が増した事で喉の奥に当たってしまったようで苦しげに眉を寄せている。しかしそれでも離そうとしないあたり、相当興奮しているようだ。
今なら素直に言ってくれるだろうか?
「理人さん、僕の顔見て好きって言って下さい」
「ん……っ、んむっ、……好き、瀬名のでけぇちんこ……たまんねぇ……」
理人は瀬名に言われるまま、視線を上げて蕩けた瞳でうっとりと呟いた。
「えぇ、そこだけ?」
不満げに言えば、理人は上目遣いで見つめながら、舌を伸ばして見せ付けるように裏筋をツーッと舐め上げた。
「不満か? こんなデカくて硬いの、他にどこにあるってんだよ? こんなの知ったら、他は物足りなくて浮気なんて無理だな」
理人は挑発的な視線で瀬名を見上げると、再び口に含み頭を上下させて唇で扱き始めた。
「……っ」
嬉しいけど、所詮身体だけ? そう思ったら、なんだか無性に悲しくなってくる。
その表情を見て、理人はフッと笑うと性器から口を離して立ち上がり瀬名の肩を押して畳の床に押し倒した。
「わ、ちょっ……理人さ」
「……冗談だよ、ばーか。全部、……お前の、全てが好きだ」
覆いかぶさるように、瀬名の上に跨りそっと頬を撫でて囁く。
「理人さん……」
「お前以外とは、もうヤれねーよ。身体も心も、おまえでいっぱいなんだ。責任取れ、馬鹿野郎……」
耳元に顔を近づけて、吐息混じりの甘い声で理人は言った。
理人は普段滅多にこういう事は言わないから、余計破壊力があって、嬉しさに胸が熱くなる。
「理人さん、僕も貴方が好きです。愛しています」
瀬名は腕を伸ばすと理人を引き寄せ、強く抱きしめた。
「――」
互いの視線が絡み、引き合うみたいに二人同時に唇を寄せ合った。
そこに「お夕食をお持ちしました」と、部屋の外から声が掛かる。
「っ!」
あと数ミリでキス、と言う距離を、互いにバッと頭を引いて広げた。
「……続きは、夕食の後……ですかね」
「……っ」
本当にタイミングが悪い。流石に居留守をつかう訳にもいかず、盛大な溜息を吐くと羞恥心で真っ赤になって背を向けてしまった理人を横目に、立ち上がり仕方なく仲居さんを部屋に招き入れる。
廊下から微かに風が来て甘い雰囲気が払われたが、理人は赤くなってしまった顔を見られないように俯いて座卓の前に腰を下ろしていた。
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