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「あっ、や、瀬名、俺、今イったばっか……っ」
「まだですよ。僕はまだです」
「ふざ、けんなっ、んっ、ちょ、ゆっくり……っ」
再び始まった律動に、理人の抗議の言葉は直ぐに甘い吐息に変わる。
「ごめんなさい、無理っ」
「そんな……ッぁあっ!!」
切羽詰まった声と表情に、理人の心臓が大きく跳ねた。瀬名に求められているのだと実感すると、それだけで胸がいっぱいになる。
「はぁっ、理人さん、理人さん……っ」
「んっ、ふぁ……っ、ぁ、ぁっ」
瀬名の額に玉のような汗が浮かび、それがポタリポタリと理人の頬に落ちる。その僅かな刺激にも敏感に反応してしまう。
「っ、理人さん……っ」
「んっ、ふ、んんっ」
瀬名の指が理人の顔にかかり、髪を掻き分けた。そのまま引き寄せられて唇を重ねられ、互いの舌を絡ませ合う。
瀬名とのキスは甘かった。理人は瀬名の首に腕を絡めて引き寄せ、深く味わう。キスの合間に目を開けると、何処か困ったような表情をして笑っている瀬名の顔が見えた。
「っ、何笑ってんだよ」
「いえ……、幸せだなって思っただけです」
「……っ」
不意打ちでそういう事を言われると弱い。思わず顔を背けると、瀬名はクスリと笑いを漏らし、理人の髪を優しく撫でた。そして、ゆっくりと抽挿を再開する。
「は、ぁっ……んんっ、んふっ」
ゆっくりとしたストロークで最奥を穿たれ、理人の口からは意味を成さない音だけが零れ落ちていく。
「ぁ、ぁっ、んんっ」
「はぁ……っ、理人さん……っ」
「んぁっ、ぁっ、瀬名……っあっ、は、んんっ」
徐々に激しさを増していく瀬名の腰の動きに翻弄され、理人の思考はどろりと溶けていく。
「あ……っ、ぁあっ、や、またっ、……っ」
「いいよ……っ、一緒に……」
「あっ、ぁあっ、瀬名……っ」
体内で熱い飛沫が弾けた瞬間、理人も二度目の絶頂を迎えた。
「はぁ、はぁ……理人さん、好きです……」
繋がったまま、瀬名が理人をきつく抱き締める。瀬名の体温と鼓動が心地よい。
真剣な眼差しで見下ろされ自然と口元に笑顔が浮かぶ。
幸せ過ぎて、身体がドロドロに溶かされてしまいそうだ。
これから先の事なんてどうなるかわからないけれど、今、この瞬間の幸せを噛みしめていたい。
「俺も、お前が――」
好きだと口を開きかけたその時――。
「ちょっと! 押さないでちょうだいっ!」
「っ!」
部屋の外から特徴のある高めの声が響いてきて、二人はびくりと体を跳ねさせた。
「……」
「……」
乱れた浴衣を適当に整え、勢いよくドアを開ける。
「――あら?」
そこに居たのはしゃがんでドアに紙コップを当てて耳を欹てているナオミと、その友人の姿。
「~~~~ッお、お、お前らっ……いつからそこに居た!?」
「期待してたわけじゃないからっ! って、ところくらいから、かしら?」
「っ、最初っからじゃねえか!! ふざけんなっ、クソがっ!!」
静かな館内に理人の絶叫が響き渡ったのは言うまでもないだろう――。
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