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障子からうっすら差し込む光で目が覚めた。 右腕だけが冷たい。布団から出ていた腕を引き込むと、そこだけすっかり冷えてしまっていた。 隣では瀬名が穏やかな寝息を立てて眠っている。 (……可愛い顔して寝やがって) 普段はあんなに男前なくせに、寝顔はあどけなくて子供みたいだと思う。 長いまつ毛や整った鼻梁に思わず見入ってしまう。こんなにも綺麗な男が自分のものなのだと思うと、なんだか無性に幸せな気分になる。 昨夜、散々抱き合ったというのに、まだ物足りないと思ってしまうのだから我ながら呆れてしまう。 よく眠っているのを確認して、もぞもぞと気怠い身体を移動させ、躊躇いがちに彼の懐に潜り込んだ。 昨日も思った事だが、肺いっぱいに広がる瀬名の匂いに心が落ち着く。 今まで、他人と一緒に居てこんなに心が安らぐなんて感情を持ったことが無かった。 「瀬名……もういっそ、結婚とかしちまうか……?」 ぼそりと呟いて、自嘲的な笑いが洩れた。 「ははっ、なんてな。何言ってんだお……「本当ですか!?」」 「……え?」 突然、頭上から声がしてぎょっとして目を見開いた。 そこには、目をぱっちり開けて満面の笑みを浮かべた瀬名の姿があった。 いつの間に起きていたのか。しかも今のを聞かれていただなんて! 恥ずかしさに一気に顔が熱くなる。 「瀬名……お前っ、いつから……ッ、狸寝入りだったのか!?」 「え? ああ、理人さんが僕の胸元に頬擦りしたあたりからですね」 「ほぼ最初からじゃねーか!」 「そんな事より! さっきの本当ですか!?」 「や、違くて……アレは、別に……っ」 期待に満ちた目で尋ねられて、言葉に詰まる。しどろもどろになって言い訳を探すが、上手い言い分が見つからない。 「理人さんから言ってもらえるなんて夢みたいだ……。僕、凄く嬉しいです!」 きらっきらの眩しい笑顔で言われたら、何も言えなくなってしまう。 「そ、そうか……」 なんだか気恥ずかしくなって、瀬名に背を向け布団の中に潜り込んだ理人だったが、俯いたつむじにキスをされ、そのまま瀬名の胸に閉じ込められた。 「実は、この旅行が終わったら、僕の家族に会って貰いたいなって思ってたんです……」 瀬名の言葉に驚いて顔を上げると、彼は照れたような表情で理人の髪を撫でてきた。 彼の母親とは、彼が事故に遭った時に一度挨拶した程度だが、姉にはあまりいい印象がない。

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