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「つか、何考えてんだよ……家族に会わせるって」
「んー、僕は人生の伴侶にするなら理人さん以外に考えられないし……父親が、恋人がいるなら紹介しろって五月蠅いんですよ」
「それはお前、あれだろ……女を連れて来るって言うのが大前提だろ」
普通はそうだ。親兄弟に紹介するというのはそういう意味だ。可愛い彼女を連れて来ると思っていたのに突然見ず知らずの男を連れていったら卒倒するか怒り狂って絶縁事件に発展してもおかしくない。
少なくとも自分の両親なら、どちらか、もしくは両方の可能性が高い。
その上で、強引に見合いの話を持って来て勝手に進めたり、瀬名と別れさせようとしてくるのは目に見えている。
「だめ、ですか……?」
「普通にダメだろう。つか、そもそも男と付き合ってるって言ったのか?」
「いえ……。それは、まだ……」
まだだけど、きっと話せばわかってくれるだろう。そんな楽観的な感情が透けて見えて、理人は眩暈がした。
ずっと瀬名の側に居たいと言う気持ちは本物だし、自分だってこれからの人生を共に歩くとしたら、彼以外には考えられない。
だが、両親公認ともなると話は別だ。それに、あの強烈な姉と対峙するのは少々気が引ける。
「会うのは、もう少し後でもいいんじゃないのか?」
今は、まだ。もう少しだけ、このままでいたい。
「そう……、ですね。変な事言ってすみませんでした。理人さんは自慢の恋人だから……父に会わせたかっただけなんです。血は繋がってないんですが実の子供のように可愛がってくれた人なので」
「その気持ちは嬉しいけど、その親父さんが倒れたら洒落になんねぇだろうが。ショックで寝込んだらどうすんだ」
幼かった瀬名をここまで育ててくれた人だ。会ってみたい気もするが、今はまだその時ではない。
でも、いつか……本当に会う時が来たら……その時には―――。
そんな事を考えていると、不意に背後からぎゅっと抱きしめられた。
「瀬名?」
「ベッド以外でも、名前で呼んで欲しいな。家族になるのにいつまでも苗字で呼ぶのは……ね?」
耳元に熱い吐息を吹き込まれて、びくっと肩が跳ね上がる。
「な……っ、バッ、……それは……また……」
「ふふっ、楽しみにしてますよ」
ジワジワと赤く染まりしどろもどろに言って俯いた理人の髪に、瀬名は優しくキスを落とした。
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