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13-7
「なにを拗ねているんだ」
「別に。拗ねてなんていません」
風呂上り、首からタオルをかけて半裸のままベランダで煙草を吸っている瀬名の頭をコツンと小突く。
「嘘吐け。背中に書いてあるぞ」
「……そりゃ、恋人が口説かれてるの聞いたらいい気分はしませんよ」
「ちゃんと断っただろうが」
「でも……」
瀬名はそう言いかけて口を噤んだ。何か言いたげに口を二、三度開きかけたが結局何も言わず肺いっぱいに煙草の煙を吸い込んでは吐き出している。
「お前だって藤田と随分よろしくやってたみたいじゃねぇか。腕組んで仲良さげに歩くってどうなんだよ。そんなお前にとやかく言われる筋合いなんて……」
言ってしまってから、何か違うと思った。これではただ、あの藤田にやきもちを妬いていると言っているようなものだ。
痴話げんかのような状況に理人は狼狽えた。そうじゃない、そんな事が言いたかったわけじゃないのに。
「い、いややっぱ、今のは無し!」
急にぼっと顔を赤くした理人を見て、瀬名が一瞬驚いた顔をする。だがすぐに表情を崩した。
「藤田君にやきもちですか? かわいいなぁ理人さん」
「ち、ちが……っ、そんなんじゃ、ねぇからっ」
「違うんですか? 僕は蓮さんにめちゃくちゃ嫉妬してますけど……」
言うが早いか理人の腕を引き寄せると、抱き寄せて嚙みつくような激しいキスをして来た。舌を深く差し入れられ、理人を貪りながら部屋着の中に手を差し込む。
ヒヤリとした手が素肌に触れて我に返り、慌てて瀬名を引き剥がす。
「ちょ、待て! ここ、ベランダっ」
「誰も見てませんよ」
「そう言う問題じゃ……んっ……は、……んんっ」
抵抗虚しく再び唇を奪われ、ベランダの壁に押し付けられる。
角度を変えて何度も舌を入れられ、執拗に口腔内を攻められる。
その激しさに思わず身を任せそうになるのを抑え込み、必死で身体を押し返した。
「んぅッ……はぁ……ッ。ダメだ。こんな、ところじゃ……嫌だっ」
いくら何でも、薄い壁一枚隔てた向こう側にだって隣人が住んでいるのだ。流石にこれ以上はまずいと身を捩るが、瀬名の腕はびくりともしない。
「可愛い、誰かに見られそうになって興奮するくせに……」
「っ、そ、それとこれとは話が……っ」
「違わないですよ。その証拠にほら、此処もう勃ってきてる」
「ひぁっ……!」
ズボンの上から股間を揉まれて、思わず上擦った声が洩れた。慌てて口を手で押さえたがもう遅い。
「やっぱり……。外でこういう事されるの好きなんですよね? 本当にやらしいなぁ……」
「ちが……っ、あっ……やめ、……んっ……ふ……」
布の上からグリグリと先端を刺激され、耳元で囁きながら息を吹きかけられればそれだけでゾクゾクと快感が這い上がってくる。
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