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「……っ、ちょ、待てって」
ヒヤリとした手が素肌に触れて我に返り、理人は瀬名の胸を慌てて押し返した。
「理人さん?」
「こんな所でサカんな。……せめて、部屋で」
真っ赤になって俯いた理人の姿を見て瀬名はクスッと笑う。何がおかしいのかと理人が顔を上げると、手に持っていた煙草を灰皿に押し付けてもみ消し、そのまま抱き上げられて寝室へと運ばれる羽目になった。
ベッドの上に乱暴に投げ出され、すぐさま瀬名が圧し掛かって来る。性急な仕草で服を脱ぎ捨てると、再び深い口付けと共に愛撫が再開された。
いつもより少し荒っぽい動きだと感じたものの、それを咎める余裕など無かった。
瀬名の指先が乳首を掠めただけでビクンと身体が跳ね上がる程感じてしまう。
「は、っぁあっ」
敏感な箇所を同時に攻め立てられ、堪え切れずに甲高い声が漏れた。瀬名はそのまま片方の突起を口に含み、もう片方のそれは摘まむようにして引っ張ったり転がしたりを繰り返す。
「せ、なっソコばっか、嫌だっぁ、ぁっ!」
「嫌? 理人さんは、嫌。ばかりですね気持がいいくせに」
カリッと歯を立てられて、痛みすら感じる程の強烈な刺激にビクビクと腰が震える。瀬名の膝がぐりっと股間の膨らみを刺激してきて、一気に射精欲が高まった。
「乳首だけでこんなに硬くして……、本当に理人さんはやらしくて淫乱だ」
「ち、ちが……っ」
「違いませんよ。ほら、こんなに濡らして……。下着までぐしょぐしょじゃないですか」
「い、言うなっ馬鹿」
「言葉にされる方が感じるくせに」
「っ、あ……っ」
下着の上から握りこまれ、ぐりぐりと布越しに先端を擦られて理人は思わず声を漏らした。直に触って貰えない布越しの刺激がもどかしい。
「うわ、凄い……。こんなに濡れてる……。気持ちいいんでしょう?」
「やめっ……ん、んんッ……」
羞恥心を煽るようにわざと音を立てて責め立てる瀬名に腹立たしさを感じる反面、もっと強い快楽を求めている自分が居る事も確かだった。
無意識のうちに物足りなさそうな顔をしていたのか、それを見た瀬名が目を細めて意地の悪い笑みを浮かべる。
「止めていいんですか? 本当に? ……そんなに嫌なら仕方がない。今日はもう、寝ましょうか」
「へっ!?」
突然パッと手を離されて理人は唖然とした。何故ここで止めるんだ。散々昂らせておいて放置するなんてあんまりじゃないか……。
「どうしました? 理人さん。嫌なんでしょう? だから止めたんです」
「……っ」
(コイツ……ッ)
明らかに分かっていて言っている。瀬名は時々こうして意地悪を言う時がある。
そういう時は大抵、怒っている時か、もしくは理人を焦らして楽しんでいるかのどちらかなのだ。
今日の場合は恐らく両方。昼間、蓮と会っていたのがよほど気に入らなかったのだろう。
この男は存外嫉妬深いのだ。
「この、性悪がっ」
「はは、何とでも言ってください。じゃぁ僕は寝ますね。理人さんも明日の為に早く寝た方がいいですよ」
いけしゃぁしゃぁと言い放ち、おやすみなさい。と言いながら瀬名は布団に潜り込み理人に背を向けて目を閉じる。
「……っ」
本気でこのまま眠るつもりなのだろうか。こんな中途半端に燻った状態ではとうてい眠れるはずが無い。
理人は恐る恐る手を伸ばして瀬名の背に触れた。
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