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それからの数週間は、慌ただしく過ぎて行った。 ネットでマンションの情報を探り、よりセキュリティのしっかりした所をピックアップ。 職場の人間や知人から話を聞き、実際に現地に行ってみたりと色々調べて回った。 漸く二人が納得いくマンションが見つかったのは、引っ越しをする一週間前のことだった。 真紀の件は彼女が変な行動を起こさないように、知り合いの探偵に彼女の行動に探りを入れて貰っている。 少しでもおかしな行動が見られたら、理人に連絡が来るようになっている。 新しいマンションは職場までが今までより随分と近く、全室オーシャンビューが望めるのが売りの高級マンションだった。しかも最上階で眺めも良いという事で即決した。 「あれ? 理人さん、この家具の隙間に何か挟まってますよ?」 荷物の整理をしていると、不意に瀬名が何かを引きずり出してくる。 最初は、チェストの上に置いてあったものが落ちただけだろうと思った。しかし、出てきたのはよれよれの包装紙に包まれた、ノートサイズの箱だ。 「うわ、どろどろじゃないですか。何か書いてあるな……『merry Christmas』……?」 その包みを見て、理人はハッと顔を上げた。 「寄越せ。……それは、ただのゴミだ」 瀬名の手からひったくる様にそれを奪うと、ゴミの袋へと突っ込もうとする。 「ちょっ、待ってください! そこに付いてるのって、血……ですよね?」 「……っ」 「それ、もしかして去年のクリスマスに、僕にくれる予定だった物じゃないんですか? 僕が事故に遭って渡しそびれてた……」 「……さぁな。今更だろ」 有無を言わさず、袋に詰めたものを瀬名がすかさず拾い上げる。 「おいっ、何やって……」 「コレは僕の物でしょう? 勝手に捨てないでください」 「どうせ中身はもう使えねぇよ」 「だったら、なんでこんな所に隠すように置いていたんですか。使えないものだとわかっているんだったら、さっさと捨ててしまえばよかったのに」 正論をぶつけられては返す言葉も思いつかない。 何度も捨てようとは思ったのだ。でも、その度に目の前で車に撥ねられた瀬名の姿がチラついて、どうしても捨てることが出来なかった。

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