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13-13
それからの数週間は、慌ただしく過ぎて行った。
ネットでマンションの情報を探り、よりセキュリティのしっかりした所をピックアップ。
職場の人間や知人から話を聞き、実際に現地に行ってみたりと色々調べて回った。
漸く二人が納得いくマンションが見つかったのは、引っ越しをする一週間前のことだった。
真紀の件は彼女が変な行動を起こさないように、知り合いの探偵に彼女の行動に探りを入れて貰っている。
少しでもおかしな行動が見られたら、理人に連絡が来るようになっている。
新しいマンションは職場までが今までより随分と近く、全室オーシャンビューが望めるのが売りの高級マンションだった。しかも最上階で眺めも良いという事で即決した。
「あれ? 理人さん、この家具の隙間に何か挟まってますよ?」
荷物の整理をしていると、不意に瀬名が何かを引きずり出してくる。
最初は、チェストの上に置いてあったものが落ちただけだろうと思った。しかし、出てきたのはよれよれの包装紙に包まれた、ノートサイズの箱だ。
「うわ、どろどろじゃないですか。何か書いてあるな……『merry Christmas』……?」
その包みを見て、理人はハッと顔を上げた。
「寄越せ。……それは、ただのゴミだ」
瀬名の手からひったくる様にそれを奪うと、ゴミの袋へと突っ込もうとする。
「ちょっ、待ってください! そこに付いてるのって、血……ですよね?」
「……っ」
「それ、もしかして去年のクリスマスに、僕にくれる予定だった物じゃないんですか? 僕が事故に遭って渡しそびれてた……」
「……さぁな。今更だろ」
有無を言わさず、袋に詰めたものを瀬名がすかさず拾い上げる。
「おいっ、何やって……」
「コレは僕の物でしょう? 勝手に捨てないでください」
「どうせ中身はもう使えねぇよ」
「だったら、なんでこんな所に隠すように置いていたんですか。使えないものだとわかっているんだったら、さっさと捨ててしまえばよかったのに」
正論をぶつけられては返す言葉も思いつかない。
何度も捨てようとは思ったのだ。でも、その度に目の前で車に撥ねられた瀬名の姿がチラついて、どうしても捨てることが出来なかった。
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