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結局、昼休憩の時間になっても音沙汰が無かったので、理人の方が我慢できずに連絡を入れてしまった。すると、意外にも直ぐに返信が来てホッとする。 熱が高いのか、「38.9℃」と表示された体温計の画像のみが送られてきて、理人は小さく舌打ちをした。 やっぱり、無理矢理でも仕事を休んだ方が良かっただろうか? しかし、出来る事なんて限られている。 心配で仕方なかったが、自分の都合で理人が仕事を休むなんて、おそらく彼は喜ばないだろう。 取り敢えず、今日は定時で帰りたい。その為にも今ある仕事を終わらせなくては。 理人は気持ちを切り替えると、目の前の仕事に集中することにした。 だが、終了間際になって、理人は書類の間違いを発見してしまった。  企業へと提出しなければならない企画書の数字のミスだ。しかも、一番してはいけない所でやらかしている。 「チッ、おい藤田。ちょっと来い」 理人は、担当者として名前の挙がっている藤田を自分のデスクに呼んだ。いくら新入社員だからと言って甘やかすことなんて出来ない。藤田は今まで瀬名が陰ながらフォローに回っていたのだろう。 でなければ、こんなケアレスミスが見つかるはずが無い。終わった後のチェックを怠った結果とも言うべきだろうか。 就業間際に呼び出されたのが気に食わなかったのか。藤田は憮然とした態度で近寄って来る。 「ここの数字が間違っているから、今すぐに直せ。そうすると、全部の数字が違ってくるから、最初からやり直した方が早い。明日の朝一で提出しなければいけない書類だし、日付は今日の物にしないといけないから、入力したら俺に寄越せ。俺がチェックしていく」 事の重大さがわかっていないのか、藤田は短く息を吐くと理人の手から書類を奪って席に戻って行った。 瀬名が居る時とは大違いの態度に理人の苛立ちが募ったが、今はとにかく早く戻りたい一心で、藤田が作業をするのを横目に確認しつつ、理人も急いで仕事に戻った。

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