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修正を始めて30分。1時間と経つうちにようやく事の重大さがわかって来たのか、藤田の顔から笑顔が消えた。
自分のミスで上司である理人に残業をさせるなんて言語道断だと本田に咎められ、小さくなっている。
結局、全て終わったのは22時過ぎの事だった。終業直前にミスが発覚したのは痛かったが、なんとか間に合いそうで良かった。
「じゃぁ、俺は帰るから。後始末は頼んだぞ」
「あ……、はいっ」
デスクでぐったりとしている藤田に声を掛け、適当に上着を掴むと急ぎ足で職場を後にする。
藤田が何か言いたそうにしていたが、何も言って来なかったので大した用では無いのだろう。
瀬名は今どうしているだろうか?
腹を空かせていてはいけないと、近くのコンビニに立ち寄り、ゼリー飲料やスポーツドリンク、熱さまシートなどを買い込んで帰宅した。
「……瀬名?」
ベッドルームをひょっこり覗くと、瀬名は大人しく眠っているようだった。仕事に行く前に頭の下に敷いてやったアイスノンは既に温くなってしまっていたので、そっと頭の下から引き抜いて新しいものと交換してやる。
「ん……つめた……っ」
「悪い。起こしちまったか?」
「理人さん。お仕事お疲れ様です。今日も忙しかったみたいですね」
汗で張り付いた前髪を掻き上げ、苦しそうに息をつきながら瀬名がはにかんだような笑顔を向けてきた。
乱れた前髪と苦し気に潜められた眉が、いつにも増して野性的な色気を放っているように見える。
「あぁ。遅くなって悪かったな……。何も食っていないだろう? 食欲は?」
「あんまり……。でも、理人さんが作ってくれるんなら……食べたいです」
肩で荒い息をしながら、瀬名が甘えるようにすり寄って来てドキリとした。こんな風に甘えてこられると弱い。
「……わかった、ちょっと待ってろ」
お粥なんて作ったことも無いが、食べたいと言うのなら仕方がない。スマホ片手にキッチンに立ち、検索しながら調理を始めた。
鍋を取り出してレトルトのご飯を入れ、多めの水と、冷蔵庫の奥底で眠っていた白菜と卵、鶏ガラスープの素と塩胡椒、醤油を入れていく。
本当はネギを入れた方が美味しいらしいのだが、生憎切らしていたので断念した。
暫く煮込んでいると、ふわりといい香りが漂ってくる。
「よし、こんなもんか」
味をみてみるが、薄すぎず濃過ぎないちょうどいい味付けになっていると思う。
我ながら良く出来たと自賛しながら薬と、ゼリー飲料も付けてトレイに乗せると、瀬名の待つ寝室へと向かった。
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