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触れ合っている部分が、焼けるように熱い。 「理人さんの匂い……落ち着きます」 時折額に口付けを落としながら、瀬名の指がゆっくりと理人の髪を撫でる。 居心地の悪さを感じながらも、暫くされるがままにジッとしていると段々と腕の重みが増して、やがて規則正しい呼吸音が聞こえてきた。 完全に眠ったのを確認し、腕の下から起こさないようにそっと体を抜いた。 「ったく……、俺は抱き枕じゃねーんだぞ」 スヤスヤと眠る顔をそっと覗いて苦笑する。 やっぱり、何度見ても整った顔立ちをしているなと思う。濃く長い睫毛がくっきりと影を落としている。薄く開いた唇、枕に流れるサラサラの髪。 「……早くよくなれ。瀬名……」 そう呟くと、理人はそっと瀬名の額にキスを落とした。 それから二日。 瀬名の熱は最初の頃に比べると順調に快方へと向かっていた。まだ平熱とまでにはいかないがこの調子なら明日、明後日には仕事にも復帰できるだろう。 「良かった。だいぶ下がったな」 「理人さんの手厚い看護のお陰ですよ」 「別に……。たまたま土日が被っただけだ。特に用事も無かったしな……それに、弱ったお前の世話をするのは中々楽しかったぞ?」 「……っ」 クス、と笑いながら熱く絞ったタオルを握ってベッドへと近付く。 「あっ、……あー……もう大丈夫です。そこに置いといてくれたら後は自分でやるので」 急に視線を逸らし慌てたように瀬名が理人からタオルを奪い取ろうとする。 「何をいまさら恥ずかしがってるんだ? お前の裸なんて見慣れているから今更だろうが」 「……そういう問題じゃないんですよ」 「ふぅん?」 これはもしかして……? 何となくピンと来た理人が意地悪くニヤリと笑い、ベッドの上で体を起こしている瀬名の膝の上に跨りするりと服に指を掛けた。 「いいですって、自分でできますからっ」 「遠慮すんなって」 焦る瀬名が珍しくて、ついつい意地悪をしたくなってしまう。 「……病人を襲わないでください!」 「病人? お前のココは随分と元気そうじゃないか」 困ったように言う瀬名を至近距離で見つめながら、股間をそっと指で撫で上げた。途端にビクリと肩を震わせた瀬名が恨めしそうに睨みつけて来る。 「……理人さんに、うつすわけにはいかないでしょう?」 「別に俺は、構わないが?」 そう言って、今度は布越しに形を確かめるように揉んでやる。瀬名は必死で声を噛み殺しているが身体は正直だ。いやらしい手つきに徐々に硬度を増していくのがわかった。 「……僕の理性を試してます?」 「移るんならもうとっくにうつってるだろっ! 四六時中側に居て、ずっと同じ部屋に居たんだから」 身体を摺り寄せ、瀬名に体重を掛けるとそのまま2人でベッドに押し倒す。 「それに、正直なところ……俺の方が限界なんだが。お前は違うのか?」 今にも唇が触れ合いそうな距離で囁く。瀬名がごくりと息を呑むのがわかった。 「キツイだろうからお前は寝てればいい……俺が全部、その……て、やるから……」 「ハハッ、随分と甘やかしてくれるんですね?」 「お前が元気になるんなら、いくらでも甘やかしてやる」 瀬名の背中に腕を回し、唇を触れ合わせながらゆっくりとシーツの海へ沈み込んでいく。 「もう……理人さんには適わないな…」 はにかんだように笑い、ゆっくりと唇を塞ぎながらも瀬名の瞳には情欲に濡れた色が浮かんでいた。

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