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瀬名から貰った風邪はかなり凶悪で、理人が無事に完治したのは数日後。その間、瀬名は有休を使い理人にべったりと付き添っていた。 勿論会社には連絡済みである。 「瀬名さーん! もう大丈夫なんですか!?」 久しぶり出社すると、藤田が猫撫で声で瀬名に擦り寄って来た。 「あぁ、うん。もう平気、ごめんね仕事任せちゃって」 「瀬名さん居なくって不安で寂しかったです。けど、何とか乗り切りれました」 あからさまに媚びを売っているように見える藤田の態度にいら立ちが募る。 コイツがどれだけ安っぽい媚びを売ったって瀬名は眼中にないだろうから別にいい。だがやっぱり面白くない。 胸の奥のざわめきを鎮めようと理人は小さく深呼吸する。 ふと、瀬名の肩越しに藤田と目が合い、あからさまにツンとそっぽを向かれ、思わずムカッとした。 「理人さん、顔怖いですよ」 「……うるさい」 瀬名の言葉に不機嫌な表情を隠しもせず、フンと鼻を鳴らして自分の席につく。 直属の上司に何だあの態度は。やはり一度ガツンと言ってやった方がいいかもしれない。 瀬名は何故、あの男を好き勝手にさせているんだ? あんな見え透いた媚びに気付かない奴では無いだろうに。 二人の様子に苛々しながらPCを開きメールをチェックしているとイライラの元凶である藤田がゆっくりと此方に近づいて来るのがわかった。 「お疲れ様です。鬼塚部部長体調はもう大丈夫なんですか?」 何とも白々しい。さっき思いっきり目が合っただろうが。と文句を言ってやりたいのをグッと堪える。 「……っ、何か用か?」 「そんなに睨まないで下さい。萩原先輩から聞きました。部長って瀬名さんと付き合ってるんですよね?」 意味深に顔を近付け、耳元でそう囁かれる。 萩原のヤツ、余計な事を……。 「チッ……そう、だと言ったら?」 「あれ、認めるんですか? もっと狼狽えるかと思ったのに」 「別に、バレているものを取り繕ったって仕方が無いだろう。で? 要件はなんだ」 早く話を終わらせたい。この男と話す言葉の端々が何だか癇に障る。 理人のイライラが伝わったのか、藤田は一瞬びくりと小さく震えたものの、肩をすくめて口を開いた。

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